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自称小説サイト管理人七貴の、書評とだらだらとした日常を送り続けるブログ。
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犬上すくねの恋愛マンガ。



ラバーズ7 7 (7) (サンデーGXコミックス)ラバーズ7 7 (7) (サンデーGXコミックス)
犬上 すくね

小学館 2007-08-17
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サブタイトルこそ 伊勢佐木真剣「卓球」師外伝なわけだが、卓球は舞台装置でしかない。まあ、表紙を見てもらえばスポーツ漫画じゃないことは分かってもらえるだろう。


名前に反して人になつかない子猫系ヒロイン、なつきと、バイト仲間の高校生、森岡ひろみ、そしてバイト先のコンビニのオーナーで、なつきの母親と同級生だった32歳のおっさん(作中でもおっさんと呼ばれるが、32歳はおっさんだろうか……)の三角関係のお話。


このコンビニのオーナー、東ノ本宗則(とうのもと むねのり)が、実はヤクザの組長で、万引きだろうと揉め事だろうとなんでも卓球勝負で片をつけるという変人というのがミソ。

高校生とヤクザとコンビニを結んでいるのが、卓球というわけで。

ヒロインのなつきがとにかく可愛い。クールで人を寄せつかないかたくなさを持ちながら、ふとしたところで見せる年相応のかわいらしさや、素直さ、我関せずという態度を取りながら、心の中でやきもちを焼いてたりと本当に身もだえするほどかわいい。

こりゃ32歳のおっさんも惚れてしまうわけだよなあ。
最初は高校時代の思い出の女だった、なつきの母親の面影をみて、なつきに近づく宗則だが、徐々になつき自身に惚れてしまう。

15も年下の女子高生にそういう感情を抱いてしまった宗則の苦悩がなんとも微笑ましい。いい歳した男なので、なつきに対してみだらなことを考えたりもするのだが、理解と分別のある大人でもある彼は、自制してなつきと距離を離そうとしたりする。
あまつさえ、なつきのため、恋敵のひろみとの喧嘩の仲裁をしてしまったりするのだ。まったく。

この微妙な三角関係の揺れ動きを、美人のオカマや組の子分、高校の友人たちなどと人間関係をおりぜることで、重くなりすぎずさわやかに描いている。この辺は犬上すくねの作風の良いところがばっちり出ていて巧い。


コンビニと賭け卓球という一見無秩序な要素も、高校生とヤクザの若組長という別世界の人物たちを同じレベルで存在させるために的確な装置の配置でなのだと読んでいて気づかされる。

この漫画において、卓球勝負はコミュニケーションのツールであり、関係性の表明と確認の手段である。
15歳のなつきと32歳の宗則では、会話よりも卓球をするほうが互いにリラックスができお互いを理解できるし、腕力や地位で宗則で敵わないひろみは卓球で負かすことで自分より優位に立つ宗則の鼻を明かしてやりたいと考える。
そしてなつきとひろみは卓球により互いの意地を通そうとする。

また、卓球をする二人を観る立場となれば、自ずと二人の距離と関係に気づかされてしまう。

初読ではなぜ卓球なのだろうかと思うが、通読すれば卓球が介在するからこそ、このアンバランスな三角関係が維持されているのだと分かるだろう。

とにかくヒロインが可愛く、三角関係はぐらぐらなのに、シリアスになりすぎず面白い!ロマンチックになりすぎず、リアルにもならない。
少年誌のラブコメはマンネリで、少女マンガは甘すぎる、そんな人におすすめの恋愛マンガ。


で、ここからが恋の行方のネタバレを含む読了後の感想となるので、知りたくない人は止めておいてほしい。






読了して思ったのは、やっぱりだめだったか……というため息。
自分は年齢的にはちょうどひろみと宗則の中間に当たるわけだが、どうしても15歳の女子高生に惚れて思い悩む宗則に肩入れしうのだ。

中盤辺りから、すれ違うひろみとなつきを手助けしてしまって自己嫌悪する宗則という構図が繰り返されて、なつきが裕美に傾きかけていると思われる描写が出てきた時にうすうすは感じていたが、最後には宗則に勝って欲しかった。

でも、7巻の展開からすると宗則の完敗だよなあ。

自分の気持ちに素直になったのはいいものの、車と金でなつきを連れ出して釣ろうとするというのはあまりに幼稚だし、焦った挙句、無理やり気味にキスして告白とか大人の余裕無さ杉だろう。あまつさえ、最後には一回り歳の離れた高校生と勝手に彼女を賭けて卓球勝負か!?

最後はなつきの気持ちに気づいて、納得できないけどとりあえず譲ってやるぜで引いてやればいいものを、醜態をさらしたな、32歳。

あまりに無様だなあ。
へたれの宗則らしいといえばらしいが、それでもあきらめられないというのも呆れるを通り越して、哀れだ。

あと、ひろみとなつきもせっかく想いを通じ合ったんだからもう一歩進んだ関係になってもよかったんじゃなかろうか。ううーむ。


終わってみれば、歳の差を超えられなかったというのがオチ的には残念か。

でも面白い。傑作でした。
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