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自称小説サイト管理人七貴の、書評とだらだらとした日常を送り続けるブログ。
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待ちに待った西澤保彦の新作。

収穫祭収穫祭
西澤 保彦

幻冬舎 2007-07
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〈ノンシリーズ〉の〈書き下ろし〉で西澤の最長作品!その上帯には「傑作『依存』を超えた」の文字!!

これで期待しないわけはない!

あらすじはざっとこんな感じ。

バスも一日数本という首尾木(しおき)村。
過疎化が著しい北西区にはたった6世帯、十数名が住むだけという有様だった。

そんな長閑なだけの村に起こった最悪の惨劇。首を鎌で切り裂くという残虐な手法で謎の殺人鬼が嵐で孤立した北西区の住人を次々と殺してまわる。

恐怖の一夜を過ごし、大きな代償と引き換えに生き残った3人の中学生たち。
世間を大いに騒がせた事件も、三人の証言により犯人死亡のまま闇に葬られることとなった。
しかし、3人は知っている。真犯人は捕まっていないのだ。
9年後、事件により人生を狂わされた3人に事件を掘り起こそうとするフリーライターが近づく、そして再び起こるあの事件をなぞるような怪事件……果たして真実はどこにあるのか……。



橋が落ち陸の孤島となった北西区の恐怖の一夜は圧巻だ。
助けを求め村をさまようが、家を訪ねればそこにあるのは首から真っ赤に染まった死体、死体、死体。

姿泣き殺人鬼と村の全てを闇に覆ってしまう嵐。
極限状態の絶望は読み手をぐいぐいとひきつける。

生き残りの一人である繭子と省路のそれぞれが時を経てたどり着く真実はまさに驚愕。

600ページ弱ある本書だが、だれることなく最後まで楽しめた。

西澤保彦はトリック系ではなく、ロジック系の推理作家であるが、今回も精巧に伏線が張られている。中々見事なので再読でまた楽しめそうだ。


良くも悪くも〈西澤らしい〉作品といえる。人間の悪意に満ち満ちたダークな展開とグロテスクとも取れるほどの濃密なエロティシズムが楽しめる。

黒さは傑作「黄金色の祈り」や「聯愁殺」を超え、淫靡さは「奈津子シリーズ」並み。鬱でエロエロは西澤の十八番である。先生今回かなり気合入ってる。


ただ、ファンであるからこそ色々と指摘したいこともある。

中盤での省路と繭子の周囲で起こる惨劇の再現といえる連続殺人事件。だが、この事件の実態がひどい。
いくらなんでもそんな理由で人殺すか?どうしてあの乱雑さで捕まらなかったんだというあり得なさ。

しかし、それすら前菜に過ぎない。

メインは過去の事件の真相。
ドキドキしながらまさか、あいつじゃねえよななんて思ってたら本当にそいつでショック。

まあ、もともと登場人物ほとんど死んじゃってるんだから勘ですら当たるくらいなんだけど、それでもこれは当たって欲しくなかった。

可能には可能かもしれない。
しかしいくらなんでも無茶だろうという展開。どうやってそれで十数人殺せるんだよ。
しかも動機がさっぱり理解できない。もうちょっと頭使えって犯人。おバカすぎる。

その上、読者置いてきぼりのまま終盤での更なる超展開が待ち受ける。

これはもう素で驚いた。アリとかナシとかの騒ぐレベルじゃない。
繭子が(以下検閲)とか、その(検閲)が(検閲)だったとか。

( ゚д゚)ポカーン

ねーよ。

……先生、何かの影響受けすぎです。
これだったらSF展開に逃げたほうがリアリティがあったんじゃないかと思うくらい。
最後は3人の再会で締めても良かったんじゃないだろうか。


ラストのラストで『収穫祭』の意味が分かるようになっているんだけど、ここら辺は素直にうまい。このオチを用意できるところが西澤の魅力だろう。


色々と指摘もしたが、個人的には面白いと思える本だった。これは本当。
飽きさせず西澤らしさの詰め込まれた本だ。


ただ、ファンだから楽しめる部分もあって、西澤保彦という作家を知らない人にいきなり勧められる本ではないのも事実。

ぜひ一人でも多くの人に、この世界観に浸って欲しいと思う。


さすがに『依存』は超えられなかったか。(長さでは超えたが)




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