忍者ブログ
自称小説サイト管理人七貴の、書評とだらだらとした日常を送り続けるブログ。
[131]  [129]  [128]  [127]  [126]  [125]  [124]  [123]  [122
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2004年度「このミステリーがすごい!」1位の作品。それまでずっと寡作が続いていた法月綸太郎の、しかも綸太郎シリーズの久しぶりの長編ということで話題になった一冊である。


生首に聞いてみろ生首に聞いてみろ
法月 綸太郎

角川書店 2004-09
売り上げランキング : 157426

Amazonで詳しく見る
by G-Tools



作者の法月と同名の推理作家“綸太郎”が探偵役の本シリーズ。このミス1位ということで期待して読んだ。


あらすじは以下。
友人の紹介で、綸太郎はアマチュア探偵として翻訳家の川島敦志からの依頼を受けることとなった。
それは先日亡くなった敦志の兄でもある、彫刻家、川島伊作の遺作となった彫刻についてであった。

川島伊作が病により息を引き取ったその夜、何者かがアトリエから彫刻の頭部を切断し、持ち去ったというのだ。
その彫刻は、伊作の娘、江知佳(えちか)がモデルとなったもので、彼の代表作『母子像』の集大成となるはずのものだった。

個人の名誉のためとして極秘に依頼を受けた綸太郎だったが、捜査をするうちに、事件はついに本物の生首が届けられるという猟奇殺人に発展し……。



読了後の素直な感想を言えば、良くも悪くも探偵小説、といったところか。

探偵の捜査により少しずつ事件のパーツが集まり、おぼろげながら事件の全体像が現れ、最後にきちんと締める。

ただ、少し引っ張りすぎた印象は否めない。
事件としては、彫刻の頭部切断事件と、頭部切断殺人事件の二つだが、二つは表裏一体の関係にあり、ようするにネタとしてはワンアイデアなのだ。

それでも捜査の過程が楽しめれば探偵小説としては成功だったのだろうけど、少々盛り上がりに欠けた点が残念だ。
綸太郎は今回いいとこ無かったし。


彫刻事件の方がメインとなってしまうの話なので、被害者があっさりと殺される部分や、犯人の薄さが少し気になる。

しかし、後半の怒涛の展開は面白い。
なぜ彫刻の首は切断されたのか?
前半に少々退屈なばかりに入れたインサイドキャステイング手法の解説が後半に一気に意味を成す。
彫刻技術をあれほど巧みにミステリーに組み込んだのは、見事と褒めたい。

また、後味が悪いとの評判もアマゾンの解説で見かけた。
勘違いと不幸な偶然積み重ねが招いた悲劇は、救いがないものであり、読者も真相を知った時に、被害者が明らかになったときに続き、二度目のやるせない無力感を感じただろう。

真相解明でカタルシスが得られない作品だけに余計に後味の悪さが立ってしまうのではないだろうか。




だが私にとって、この程度の「苦味」はコーヒーのようなもので、後味の余韻すら楽しめた。

私は西澤保彦という劇薬の後味を知っているので。


PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
カテゴリー
分類別に記事を見たい
日常:普通の日記で、特にテーマの無いもの。 書評:読んだ本の感想。ミステリー多し。 小説創作:一応ここは創作小説サイトのブログですので。 想うこと:日記よりも堅苦しい話題。 自分のこと:自己紹介文。 ゲーム:おもにコンシュマーゲーム。 その他:分類不能。 旅行:四国旅行紀。
カウンタ
最新CM
最新TB
プロフィール
HN:
七貴
性別:
男性
趣味:
読書 小説執筆
自己紹介:
残念ながら、紹介するほど珍しい人間でもなく、
面白い話が出来るほど特異な人生も送っておりません。

二十台の男。弱小小説サイトの管理人です。

何かの縁です。どうかよろしく。
バーコード
アクセス解析
書評本一覧
五十音順になっています。 タイトルまたは作者名でブログ検索にかけて下さい。

 アクロイド殺人事件(アガサ・クリスティ)
 生贄を抱く夜(西澤保彦)
 異邦人 fusion(西澤保彦)
 エジプト十字架の謎(エラリー・クイーン)
 江戸川乱歩傑作選(江戸川乱歩)

 解体諸因(西澤保彦)
 彼女が死んだ夜(西澤保彦)
 99%の誘拐(岡嶋二人)
 黄金色の祈り(西澤保彦)
 クビキリサイクル(西尾維新)
 九マイルは遠すぎる(ハリィ・ケメルマン)
 極限推理コロシアム(矢野龍王)
 皇国の守護者(佐藤大輔)

 西城秀樹のおかげです(森奈津子)
 十角館の殺人(綾辻行人)
 小生物語(乙一)
 涼宮ハルヒの憂鬱(谷川流)
 全てがFになる(森博嗣)

 タイム・リープ あしたはきのう(高畑京一郎)  ダブルキャスト(高畑京一郎)
 手紙(東野圭吾)
 天帝妖狐(乙一)
 DDD(1)(奈須きのこ)
 電脳娼婦(森奈津子)
 東京タワー オカンとボクと、時々、オトン(リリー・フランキー)
 独白するユニバーサル横メルカトル(平山夢明)
 ドグラ・マグラ(夢野久作)

 夏の夜会(西澤保彦)

 麦酒の家の冒険(西澤保彦)
 人のセックスを笑うな(山崎ナオコーラ)
 美女と野球(リリー・フランキー)
 病牀六尺(正岡子規)
 富嶽百景(太宰治)
 平面いぬ。(乙一)
 ペンギン革命(筑波さくら)
 坊っちゃん(夏目漱石)

 マリア様がみてる 仮面のアクトレス(今野緒雪)
 マリア様がみてる 大きな扉 小さな鍵(今野緒雪)
 マリア様がみてる クリスクロス(今野緒雪)
 戻り川心中(連城三紀彦)
 名探偵はもういない(霧舎巧)

 宵闇眩燈草紙(八房龍之助)
 妖奇切断譜(貫井徳郎)

ブログ内検索
忍者ブログ [PR]