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自称小説サイト管理人七貴の、書評とだらだらとした日常を送り続けるブログ。
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ノートパソコンの《シラハ》嬢が帰ってきた。
一時は中のファイルや設定も危ないと思ったが、マザーボードを換えてもらい(学生向けの4年保障なのでタダ)、すこぶるご機嫌になって戻ってきた。NECに感謝。

さて、書評に移るとしよう。


 16歳でジャンプ小説大賞を獲った乙一の中篇2作品を収めた作品集。
この、[16歳でジャンプ小説大賞を獲った]というのは、乙一の枕詞である。


 表題作、「天帝妖狐」は行き倒れになりかけたところを助けられた、顔を包帯で隠した青年夜木をめぐるホラー。

 正直言えば、物足りない作品である。
 夜木の過去の告白や、身体が変貌していく過程などはやはり巧さを感じるが、「乙一らしさ」が足りないように思う。
 しかし、それでもラストの夜木を助けた少女、杏子との最後のやり取りは見事な美しさがあった。

 個人的には、「天帝妖狐」よりも、もう一篇の「A MASKED BALL」が白眉の出来だった。

 A MASKED BALLはトイレの落書きをめぐるホラーを書いた一篇だが、ミステリー的な展開でもある。

 主人公の上村はタバコを隠れて吸うごく普通の高校生。
 上村はより安全な校内での喫煙場所を求め、剣道場裏の男子トイレの個室にたどり着く。

 ふと見たトイレの壁にあったのは「ラクガキスルベカラズ」という妙な落書き。

 そこに、上村たちその個室の利用者がメッセージをつけ始める。
 
 お互い顔も名前も知らないままに続く落書きメッセージのやり取り。
 しかし、校内の物を破壊するという、落書きの予告通りの事件が、発生しだし……。



 トイレの落書きでのやり取りを主軸に物語りは展開するが、ペンネームで書かれているので主人公にはほかの書き込みが誰なのかわからない。

 解説の我孫子武丸の受け売りになってしまうが、匿名性のコミュニケーションをテーマにしながら、トイレの落書きという非常にアナクロな設定でしれっと書いてしまっているのがすごい。

 中盤以降、エキセントリックな落書きと行動をするようになるなぞの人物――通称「カタカナ」をめぐり、サスペンス的な展開になるが、上村の視点からさらっと伏線やミスリードがちりばめられていて、巧みである。

 特に「カタカナ」の正体や、最後まで正体をぼかしている、ある人物のあつかいに乙一のセンスを感じる。
 これが並みの作家なら、直接的でもっとくどい描写になってしまい、余韻を台無しにしそうだ。読み返してみると巧妙な伏線の描写になっていることに感服した。

 ありふれたモチーフをひねり、何気ない描写に伏線を張り、さりげなくミスリード。絶妙に伏線を回収しつつ、展開はテンポよく。そして気持ちよく着地し、フォローも入れつつ、心地よい読了感を残して締め。

 まさに、天才・乙一の白眉の傑作。
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 西澤保彦という作家に出会ったのは、私が高校3年生の後半であり、それは、まさに受験の真っ只中における逃避に間違いなかった。

 特殊な設定と突飛な発想、個性的……というよりは、少々逸脱ぎみな性格の登場人物たち、コージーミステリ的なものからSF設定を生かしたロジックミステリまでの幅広い作風、軽妙で入り込みやすい文体……。

 受験勉強で疲れた高校生が逃避するにはうってつけだったのだろう。

 だが、今にして思えば、もう一つ私を魅き付けるものが西澤保彦にはあったのだと思い当たる。

 先述した西澤作品の特徴が西澤の陽の面であるなら、私を心の奥を捕らえてやまないものは陰の面―――西澤が描く《人間の暗部》だ。

 嫉妬、性欲、物欲、名誉欲、独占欲求、憎悪、嫌悪、そして承認欲求。西澤の描く物語の“動機”の多くは人間の醜い欲望からくるものである。

 一般的にすちゃらかSFミステリの作家として認識されている西澤だが、実はえぐい作品が多いことがファンの共通認識である。

 この暗さはどこくるのか、その答えの一端が見えるのが本作品である。

黄金色の祈り 文春文庫黄金色の祈り 文春文庫
西澤 保彦

文藝春秋 2003-11-08
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以下、いつも通りネタばれなし
 まず、またしても(あるいはいつもながら)、更新の間隔があいてしまったことをお詫びしたい。

 実は前回の更新を終えてから実に5時間後、私は始発電車に乗り、途中乗り換えをし、新幹線まで利用して8時前に舞浜駅に降り立つことになったのだ。

 つまり、「でぜにー海」なる、某夢と魔法のネズミが居るてーまぱあくに行ってきたのであります。

 ……いや、さすがに一人ではなく、姉と、仲のいい従姉弟二人も入れた4人で行った。

 非常に人が多くて、アトラクションはファストパス(時間指定の優先搭乗券)を取らなけれどれも2時間待ちというありさまだったが、大の苦手の絶叫系アトラクションもほとんど制覇させられ、放心するほど、楽しい休日を過ごした。

 しかし、本当の災難は連休最終日に待っていた。前日の生煮えのしゃぶしゃぶが当たったのだろうか(しかも私だけだ)、腹痛を起こし、上げて下してこの世の地獄を味わう。

 腹を押さえながら、ほうほうの体で自宅に帰り着いた。
 昨日は病院に行き、あとは一日寝ていた次第。

 今日も体調は万全と言い難い状態だが、パソコンの前に居るくらいには回復した。

 今日はこの後、休んだ分を埋めるべく、書評を一本書くつもりである。
ここ数日更新が止まっていたのは、うたわれるものにはまっていたからである。
(人として)さまざまなものを犠牲にしながら、ようやくエンディングまでたどり着くことが出来た。あとは、アイテムのコンプリートが残っている。

さてさて、久し振りの書評である。



九マイルは遠すぎる九マイルは遠すぎる
ハリイ・ケメルマン 永井 淳 深町 眞理子

早川書房 1976-07
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「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない、まして雨の中となるとなおさらだ」


 ニコラス・ウェルトは英文学教授である。

「たとえば十語ないし、十二語からなる一つの文章を作って見たまえ」
「そうしたら、君がその文章を考えたときにはまったく思いもかけなかった一連の論理的な推論を引き出してお目にかけよう」


 ニッキィ(ニコラスの愛称)の友人であり、最近法学教授をやめ、郡検事候補となった「わたし」は、彼から、からからかい混じりにこんな挑発を受ける。

 そこで、「わたし」街中で聞いた会話の断片ををニッキィに提示してみるのだが……。



 教師の経歴を持つ著者、ハリィ・ケメルマンは、上級英作文の授業中、たまたま目にとまった新聞の一文を生徒に提示し、ここからなにが推論できるかと尋ねた。
 この試みに対し、生徒の反応は芳しくなかった、しかし、ケメルマンはこの問いに対し、自分自身が推論の深みにはまってしまう。
 そこから実に14年の推敲の果てに、完成したのが紹介した一編「九マイルは遠すぎる」である。

 ニッキィは先ほどの何気ないたった一つの文章を推理し、恐るべき犯罪の真相にたどり着いてしまう。

 本作は、表題作をはじめ、ニッキィを主人公とした短編小説集となっている。
 その全てがいわゆる安楽椅子探偵小説の形式になっていて、ニッキィは限られた情報だけで、丁寧に推論を重ね、驚くべき真相にたどり着く。

 ケメルマンが教師であったこともあるのかもしれないが、題材を殺人事件にとりながらも、どの作品も陰鬱さが無く、知的で、ある意味インテリさを感じる作風である。

 それは、短編であり、安楽椅子探偵小説という形式から来るものでも在るのだが、元法学者と英文学者の会話は非常にウィットに富んでいて、推理の楽しさ、崇高さを私達に改めて教えてくれる。

 たった一つの“文章”から真相にたどり着く表題作はもちろん傑作であるが、個人的には、たった一つの“音”から推理してしまう「おしゃべり湯沸し」がおすすめ。

 世界は謎に溢れていて、推理は至高の遊戯なのだ、と雄弁に語りかける傑作短編集。

週末入った頃からマイスィートハニー(=ノートパソコン)の《シラハ》が調子を崩してしまった。


付き合い始めて4年目。ノーパソには酷な使用環境にもずっと耐えてきてくれた《彼女》。
ときどき、ご機嫌ななめのなこともあったが、それでも修理しつつ、OS再セットアップしつつ、なんとかやってきた。

しかし、ここにきて、突然前触れも無く電源が落ちるようになり、しかも、起動時にエラー、フリーズ、再々起動の嵐という重態に。


《彼女》には生活のすべてを任せていたのでかなりのダメージがあった。
まず、脳裏をよぎったのは卒論をはじめとする大学関連のファイル。
あれが無いとえらいことになる。
概算して、約半年の結果が打ち直しである。

《シラハ》をなだめすかして、起動を試みる。手を合わせもしたし、土下座だってした。

起動成功は5回に1回、しかも、起動したうち3回に1回は強制終了、もう1回はフリーズという状況の中、なんとかまともに動いた1回。

起動率7%以下という状況の中、このチャンスを利用してと思い、優先度の高いファイルから順に外付けHDDに移動。
大学関連の文章の他、小説やサイトのファイル、マイミュージック、マイピクチャも移動させることが出来た。

一安心し、システムの復元やらなにやら、思いつく限り試してみるがどうにもならない。素人判断だが、ハード面の故障だろうか。

《シラハ》は最後の力を使い果たしたのか、あれからまともな起動は一回も無い。

この文章は母の使っているデスクトップの《梅男》(うめお)により書いている。

マイスィートハニーを修理に出してみるつもりだが、治る直るといいなあ。
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自己紹介:
残念ながら、紹介するほど珍しい人間でもなく、
面白い話が出来るほど特異な人生も送っておりません。

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