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自称小説サイト管理人七貴の、書評とだらだらとした日常を送り続けるブログ。
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ここ数日更新が止まっていたのは、うたわれるものにはまっていたからである。
(人として)さまざまなものを犠牲にしながら、ようやくエンディングまでたどり着くことが出来た。あとは、アイテムのコンプリートが残っている。

さてさて、久し振りの書評である。



九マイルは遠すぎる九マイルは遠すぎる
ハリイ・ケメルマン 永井 淳 深町 眞理子

早川書房 1976-07
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「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない、まして雨の中となるとなおさらだ」


 ニコラス・ウェルトは英文学教授である。

「たとえば十語ないし、十二語からなる一つの文章を作って見たまえ」
「そうしたら、君がその文章を考えたときにはまったく思いもかけなかった一連の論理的な推論を引き出してお目にかけよう」


 ニッキィ(ニコラスの愛称)の友人であり、最近法学教授をやめ、郡検事候補となった「わたし」は、彼から、からからかい混じりにこんな挑発を受ける。

 そこで、「わたし」街中で聞いた会話の断片ををニッキィに提示してみるのだが……。



 教師の経歴を持つ著者、ハリィ・ケメルマンは、上級英作文の授業中、たまたま目にとまった新聞の一文を生徒に提示し、ここからなにが推論できるかと尋ねた。
 この試みに対し、生徒の反応は芳しくなかった、しかし、ケメルマンはこの問いに対し、自分自身が推論の深みにはまってしまう。
 そこから実に14年の推敲の果てに、完成したのが紹介した一編「九マイルは遠すぎる」である。

 ニッキィは先ほどの何気ないたった一つの文章を推理し、恐るべき犯罪の真相にたどり着いてしまう。

 本作は、表題作をはじめ、ニッキィを主人公とした短編小説集となっている。
 その全てがいわゆる安楽椅子探偵小説の形式になっていて、ニッキィは限られた情報だけで、丁寧に推論を重ね、驚くべき真相にたどり着く。

 ケメルマンが教師であったこともあるのかもしれないが、題材を殺人事件にとりながらも、どの作品も陰鬱さが無く、知的で、ある意味インテリさを感じる作風である。

 それは、短編であり、安楽椅子探偵小説という形式から来るものでも在るのだが、元法学者と英文学者の会話は非常にウィットに富んでいて、推理の楽しさ、崇高さを私達に改めて教えてくれる。

 たった一つの“文章”から真相にたどり着く表題作はもちろん傑作であるが、個人的には、たった一つの“音”から推理してしまう「おしゃべり湯沸し」がおすすめ。

 世界は謎に溢れていて、推理は至高の遊戯なのだ、と雄弁に語りかける傑作短編集。

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