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自称小説サイト管理人七貴の、書評とだらだらとした日常を送り続けるブログ。
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エラリー・クイーン『エジプト十字架の謎』読了。
ちなみに、井上勇 訳の創元推理文庫版。

エジプト十字架の謎エジプト十字架の謎
エラリー・クイーン

東京創元社 1959-09
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※ちなみに、この書評では「作者」エラリー・クイーンを“クイーン”、小説の「主人公」エラリー・クイーンを“エラリー”と分けて表記している。

首を切り取られ、「T」の形ではりつけにされた変死体。そして現場に残された「T」のサイン……。

小学校校長殺害事件の調査に乗り出したエラリーであったが、しかし、事件は離れた土地で起こった百万長者の殺人事件を皮切りに、連続殺人事件へと発展していく。
姿を見せない「復讐者」の起こす事件にエラリーもついにはさじを投げることとなるが、最後にエラリーは真実にたどり着く。



サークルで推理ゲームをするために、何回かに分けて読み合わせていた小説をついに読了。翻訳小説は読みづらい。

《ミステリーを完成させた》クイーンの国名シリーズの一冊。

なかなかよかった。
クイーンの本は恥ずかしながらはじめて読んだのだけど、きちっと書かれていて論理の筋道は立てやすかった。

ちなみにサークルで出た結論でほぼ正解だった。
推理小説を読みなれた人なら読者への挑戦まででほぼ犯人を特定できるだろう。

海外の作品特有の、軽妙な掛け合いや、エラリーと彼の恩師ヤードリーとの薀蓄交じりのジョークはなかなか楽しめた。
エラリーは好奇心に満ちて活動的で、熱中すると周りが見えなくなるような子どもっぽい性格だが、それが彼の魅力だろう。これまで読んできた小説の探偵たちは偏屈であったり、陰気であったり、変人であったりすることが多かったので、私としては好感が持てた。

有名な「読者への挑戦」は楽しい仕掛けだし、終盤の自動車と飛行機を使った犯人追跡劇も息詰まる展開でよかった。

トリックは正統派で、今読んでも風化は感じられない。
しかし、私たちが読む場合、科学捜査についてはちょっと考慮しておきたいところ。指紋認証があれば、エラリーもこんなに苦労しなかっただろうに。



ただ、犯人の動機だけはちょっと浅薄すぎる。これだけの殺人事件を起こした動機に納得ができなかったのが非常に残念。
よく言われる「人物が描けていない」推理小説の典型のようなオチだった。

しかし、この作品の価値はそんなことでは決まらないだろう。

逆に言うと、ミステリーとして完成していれば、動機など瑣末なことであるという、クイーンなりの答えというようにも思えてくる作品である。

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