掌編小説 『夢堕ち』

ログ流し強化月間ということで更新。

しかし、まあ今日は特に何かあったということでもない。
困った。

ということで、掌編小説でお茶を濁すことにします。

「夢堕ち（ゆめおち）」です。

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倉上奈緒香は気づいた。

夢だ。
この世界は夢だったんだ。
私、今夢を見ている。

クラスでパシリにされ、トイレで水を掛けられ、物を隠される、そんな毎日も全て嘘。

私の体を露骨に触ってくる担任の脂ぎった顔も、私のことをちっとも見てくれない、言い争いばかりしている両親もみんな偽者。

本当の自分は今もベッドでやすらかに寝息を立てている、奈緒香は確信していた。

こんな悪夢はたくさん。早く覚めてしまいたい。
悪夢から開放されたとき、どんなにほっとするだろう。

でも、どうしたら目が覚める？
奈緒香は起きたい、起きたい、起きたい、と強く念じてみた。

しかし、悪夢は終わらない。

ほほを強く抓ってみた。
夢だと分かっていたので痛くなかった。
やっぱり起きれない。

もっと強い刺激が必要なんだと奈緒香は思った。

近所で一番大きなマンションの最上階、そこから奈緒香は飛び降りた。
一瞬の浮遊感の後、落下していく身体。

アスファルトの地面が視界いっぱいになった時、奈緒香ベッドの上で目覚めた。

全身に汗をかいて下着が張り付いていた。

なんだ、夢か。
奈緒香は大きくため息をついた。



居間に行くと、朝から両親は相変わらず喧嘩していたし、クラスも担任も変わっていなかった。
いつも通りだった。

奈緒香は学校が終わると、夢で見た近所で最も高い建物から飛び降りた。


今度はもう、目は覚めなかった。

〈END〉