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この半年、待ちに待った待望の新刊。
皇国の守護者 4 (4) 佐藤 大輔 伊藤 悠 集英社 2006-11-17 売り上げランキング : 9 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
太平を謳歌していた島国の小国<皇国>に、大陸の巨大国家<帝国>が侵攻を開始した。
北領(ほくれい)にて<帝国>軍を迎え撃った<皇国>軍であったが、圧倒的な敗北を喫し、撤退を余儀なくされる。
主人公、新城直衛(しんじょう なおえ)中尉率いる独立捜索剣虎兵(サーベルタイガース)第十一大隊 第二中隊は、脱出を目指す<皇国>兵一万八千人を救うため、<帝国>との絶望的な撤退戦の最前線に立つことになるのだった。
マンガにはまり、市の図書館に小説が所蔵されているのを知って、2週間で最新の9巻まで読むほどのめりこんだ作品。原作は佐藤大輔。
〈皇国〉軍の撤退時間をさらに稼ぐには、迂回して拠点に迫りつつある騎兵一個大隊を足止めしなければならない。
新城は残る戦力を二つに分割し、予備隊を率いて敵の輜重段列(補給部隊)を叩くため、西への進撃を余儀なくされる。
拠点をさらに離れることはつまり、自軍の撤退には間に合わない――もう、帰ることが不可能になることを意味するのだった。
4巻でついに、北領の撤退戦が決着する。
ここまで、原作の2巻途中あたりになるのだが、すばらしい出来だと思う。
物語は〈皇国〉の負けが確定した時点から始まるため、北領編は最初から最後まで負け戦である。「〈皇国〉を救うために死んでくれ」という命令を受けた新城は、その命令を成しながら、最悪の地獄に活路を見出そうとあがき続ける。
新城直衛は戦場で冷徹かつ非情に決断し続ける。
敵を殺し果てるためにどこまでも残虐になれる男であり、より多数の兵を生かすためには、自分のために死ねと部下に微塵の躊躇も無く言い放てる男である。
戦争の才を極限の地獄で証明し続ける新城であるが、その内面は小心者であり、小便を漏らすほどの臆病者であり、自虐的で、自身の能力をまったく信じることができず、常に恐怖と自己憎悪と自己否定を抱き続けている歪んだ男でもある。
後に敵に賞賛され、味方に恐れられ、魔王と呼ばれるこの男を漫画で描くことは本当に至難のことに思える。しかし、この漫画は新城を確かに描いている。
小説の表紙や挿絵のいかつい凶相を、この漫画では少しデフォルメして描いているが、それが味方に自分の策を伝える時の諧謔的な笑みや、敵兵を嬲り殺す時の狂気の笑みを魅力的に見せている。
4巻での、頼みの綱の導術兵(テレパシーのような能力を使う特殊な兵。通信、索敵の要)の少年、金森の最後の場面。自分の為に、隊の為に死に逝く金森に、新城が許しは請わないと言いながら手を握り締めるシーンは圧倒的だ。
新城だけではなく、伊藤悠は脇役たちもしっかりと描いている。戦争の現実を知り、新城を上官として恨みながらも認め、成長していった漆原は部下から見た新城を映す鏡として巧かった。実は原作では出番の少ない兵藤や妹尾も、印象を強く残すキャラクターになっている。
特に、一巻の西田少尉のエピソードは小説には無いオリジナルでありながら、違和感無く、鮮烈なインパクトを残すものになっている。
敵側のキャラクター、特に3,4巻のバルクホルンのエピソードは魅力的にまとめられていて良かった。
5巻では新城たちの捕虜生活が描かれると思うが、ユーリアとの対面の場面が一番楽しみである。皇国の守護者は知略策謀により刻々と変化する戦争描写が楽しいが、その合間の政争や各人の思惑、キャラクターのエピソードなんかも楽しめる。
佐藤大輔の刊行ペースが遅いため、将来的に漫画がどうなるか分からないが、個人的にベストに挙げる、六芒郭防衛戦が読みたい……何年先になることか。
おまけ漫画が面白すぎる。シツジキッサ爆笑。
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面白い話が出来るほど特異な人生も送っておりません。
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ア
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