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自称小説サイト管理人七貴の、書評とだらだらとした日常を送り続けるブログ。
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 件の森奈津子の作品を読んでみよう計画第2弾。

2006/11/29森奈津子『西城秀樹のおかげです』 エロ、ギャグ、そしてバカ。読まず嫌いでした。

 先週『西城秀樹のおかげです』と一緒に借りてきた森奈津子2冊目。
 タイトルがコレで表紙がアレだったので、ちょっとカウンターのお姉さんに出しづらかった。

電脳娼婦電脳娼婦
森 奈津子

徳間書店 2004-11-19
売り上げランキング : 236740

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 内容はSF設定の官能小説の短編集といったところ。

SF的な設定を存分に生かして、倒錯的でエロティックな官能小説に仕立てている。
 前回の『西城秀樹のおかげです』と違い、笑いは極めて少ない。その結果、森奈津子の倒錯的な性愛と情愛の形が色濃く浮かぶ作品集になっている。

 以下、簡単に各編に解説を加える。

「この世よりエロティック」
 Nという女性作家が、死んで天国に居る友人と黒電話で会話してエロ小説のネタをもらっているというお話。作家Nは言わずもがなの設定。
 天国の友人浪子のいる天国は女性は圧倒的多数であり、男性は性的搾取を受けている。浪子は妹絹子と共にナオヤという男を飼っている。
 絹子のナオヤの攻めが激しくてすごいのだが、オチが少し弱い印象。

「シェヘラザードの首」
 遠い未来。ゴミ拾いをして生活する少年トマは、ゴミ捨て場で破壊されたアンドロイドの首を拾う。アンドロイドはシェヘラザードと名乗り、自分を拾ってくれればあなたに大人の物語を語ってさし上げましょうと言う。
 本作の中で、一押しの一遍。
 首だけのシェヘラザードとトマの関係性と行為が、ものすごく倒錯的で背徳的でエロティック、そしてロマンチック。首だけのシェヘラザードがここまで魅力的に思えるとは思わなかった。この作品集のなかで、割と性愛的にはノーマルなのが読みやすい一因かもしれない。
 ああ、シェヘラザードの名前の由来はアラビアンナイトか。なるほど、あの設定はパロディだったのか。納得。
 終わり方もよくて、おすすめ。

「たったひとつの冴えたやり方」
 雑誌での、SFの名作のタイトルから、別の小説を創作するという企画で書いた一遍。
 レズビアンの間でささやかれる噂、マゾヒストの究極のプレイ「たった一つの冴えたやり方」をめぐる女たちの物語。
 女たちは「たって一つの冴えたやり方」を見つけるため、ありとあらゆるプレイを試すのだが……そのプレイの内容が想像を絶するすごさ。
 少し紹介すると〈海の仲間、沼の仲間たちの愉快なヌルヌル・プレイ〉〈生け花プレイ 草月流〉とか。
 本家の「たったひとつ~」も読んだことのある身としては、あの傑作と同じ題でよくもここまでと思った。

「電脳娼婦」
 電脳空間で娼婦として働く受刑者と少年との関係を描いた物語。身体同士の繋がりとは何か、心での繋がりとは何なのかちょっと考える。
 ただ、なんとなく途中でオチが読めてしまったのも確か。

「少女狩り」
 普通の遊びに飽きた富豪たちが考えたゲームは、奴隷の少年たちが、少女の奴隷たちを押し倒し、レイプするというものだった。相手を捕まえられなければ、自分たちがやられてしまう。少年奴隷の海都はいつも、同じ少女を狙っているうちに、彼女のことを好きになってしまうのだが……。
 残酷で衝撃的な展開が胸にくる小説。伏線で、彼女の正体を読者はうすうす気づくわけだが、分かっていても重い結末。

「黒猫という名の女」
 中編。性行為が生殖意外に禁止され、極端な純潔教育が行われる未来。 性欲や性的衝動によって特殊な超能力を発揮する「能力者」が社会の影で存在していた。これは、性行為をした相手の記憶を意のままに出来る能力を持った女〈彼女〉の復讐の物語。
 本作の中ではSF的な設定が最も生かされた一遍である。〈彼女〉の側と、〈黒猫姫〉という女の事件とを交互に描き、うまくその世界の社会観を浮き上がらせていて上出来な一作。ただ、SF的な世界設定が中途半端な気もしないではない。
 能力者たちの能力や背景を上手く生かした展開が面白いが、案外と終盤は尻すぼみに終わる印象があって残念。
 
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