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自称小説サイト管理人七貴の、書評とだらだらとした日常を送り続けるブログ。
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すまない。
本当この書き出しも多いな。

春から新入社員になって3日目。研修にいっぱいいっぱいの状態。
とても本なんか読む気分にならない……。

というわけで、わりと余裕があった頃に読んだ本の感想を短く書いていくことにする。


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約一年間積読していたムシウタを読了。


今年のアニメ化企画が進行中とか。
もしかして、人気ないんじゃないかと思ってただけに嬉しい報告で、ようやく続きを読む気になった。

ムシウタとは一巻を書店で見かけてジャケ買いして以来の付き合いだ。おかげでるろおのファンにもなれた。

あらすじとしては、思春期の少年少女に寄生し、人の夢を食らう代わりに超常の力を与える“虫”という存在が出現した現代が舞台のお話。

世間に“虫”の存在を隠匿し、虫憑きを捕獲あるいは駆除する秘密組織特別環境保全事務局――通称特環は、虫憑きの自由のために戦うレジスタンス組織「むしばね」と対立していた。
 特環の局員カッコウは虫憑きたちの争いを終わらせ、同じく虫憑きの少女ふゆほたるとの再会の約束を果たそうとするのだが……といったかんじ。


単なる能力バトルに終始せず、虫憑き一人一人のスタンスや叶えたい夢がしっかりと書き込まれている作品である。

一巻では「特環 対 むしばね」という単純な図式だったが、巻を重ねるにつれて、特環内部の派閥対立や中央本部の不審な動き、むしばねの組織としての建て直し、一般人から虫憑きへの恐怖や嫌悪、虫憑きを生み出す「始まりの三匹」を巡る各人の思惑なんかが複雑に絡み合って、次々と状況が変化していっている。

難点を言えば、登場人物が多すぎる点か。
メインのキャラだけで十人は超えるのだが、サブキャラクターを入れると三十人を超える勢いなのでたまらない。
作者も意識的に登場人物の外見や性格、口調などの特徴は大げさにつけているので覚えられないものの何とか読める。変化をつけすぎてあんまりなキャラクターが多いのも人によっては鼻に付くかもしれない。

各巻ごとに、あるいは各章ごとに視点者が変わるのも困りもの。おかげで毎回物語に没頭するのに中盤ぐらいまで耐えなければならない。

『涼宮ハルヒシリーズ』のキョンの一人称視点もかなり癖のある文体だが、ムシウタに比べればはるかに読みやすく感じる。

しかし、キャラクターの多さや設定の多彩さもこのムシウタシリーズの魅力であることに違いはない。


で、7巻だが、非常に面白かった。

このシリーズ、主人公のかっこうの出番がおっそろしく少なく、一冊丸々蚊帳の外なんてこともざらである。7巻も存在感の割りにご本人の出番はゼロで、サブキャラメインの外伝的な話だったのだが、これが非常に良く出来ていた。

片田舎で虫憑きが生まれた反応があるのにその瞬間に消えるという不可解な事件が起こる。そこに東中央支部から派遣された緒方有夏月(おがたあかつき)が事件の背後にいる「魔王」なる存在を捜査することとなる。そこで南風森愛恋(はえもりあこ)と佐藤陽子の二人の少女と出会うこととなる。

……中盤から物語の枠組みがギリギリと捻じ曲がっていき、終盤にきて一気に反転し、展開が加速する。「魔王」が正体を現すまでの伏線の積み重ねが非常に活きていて、鳥肌が立った。
メインの話ではないからと期待せず、積んでいた自分を恥じる。うん、おもしろかった。


せっかく2月に8巻出ていたのだからさっさと買って読むことにしよう。
願わくば、主人公とヒロインが登場していますように。
久しぶりにやる気を出して更新しようとせっせと30分書いていた文章がブラウザが落ちたせいで水泡と消えてしまった。

ショックだ。

同じネタで文章を書き直すのは悔しいし苦痛なので、何か別の本を取り上げることにしよう。

ああ、そういえば前に読んだ『なつこ、孤島に囚われ』の書評があった。
お蔵入りになっていたが、これを引っ張り出してみよう。

なつこ、孤島に囚われ。なつこ、孤島に囚われ。
西澤 保彦

祥伝社 2000-10
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西澤保彦『なつこ、孤島に囚われ』

 西澤保彦の森奈津子シリーズ第一作。

 奈津子シリーズはファンの評判が、言ってしまえば、微妙だったため読まなかったのだが、安く手に入ったのもいい機会だと思い読むことにした。

 その名のとおり、同名の女性作家、森奈津子をモデルにしたシリーズで、他の実在作家も登場人物として出演している。

 バイセクシャルで「異端の百合作家」、森奈津子は、目覚めると孤島の別荘のベッドの上にいた。
 どうやら、見知らぬ女性に拉致されたようだが、島には奈津子の他、誰もいない。
 目の前には青い夏の海、冷蔵庫には毛蟹とビール、書棚には奈津子の趣味に合う蔵書があり、彼女は自分の状況もよく分からないまま別荘での生活を楽しんでしまう。
 自分のいる島を〈百合島〉、向かいに見える島を〈アニキ島〉と名づけた奈津子だったが、1週間後、〈アニキ島〉で死体が発見されてしまい……。


 140ページ強の中篇なので、すぐに読めたのだが、なんというか、疲れる作品だった。
 奈津子の一人称で物語は進むが、独特の思考と性格、ジュブナイル小説を意識した文体がきつく感じられたし、その上、官能小説のような妄想と展開が入り混じって、どうにもイロモノに仕上がっている。
 私はヘテロ至上主義者でも、同性愛者差別の気もないが、レズビアン描写が正直言ってどぎつく感じられた。

 「孤島の謎」についても、消化不良の感がある。推理も強引だが、真相はさらに強引……というか、ごり押しとか無理やりとかいうレベルではなく、……その、ひどい。

 なんだろう、森奈津子、というキャラクターを楽しむ小説だとは思う。

 私が作家、森奈津子の著作を読んでいないのが楽しめない一因なのかもしれないが、西澤の作品の中でも個人的にワースト。

 あまり、この表現は使わないように心がけているのだけど、あえて使う。「読み手を選ぶ作品です。」



……余程不満だったのだろうなあ私。

ちなみに、これを書いたのが11月中旬のころ。
書いては見たものの、森奈津子の作品を読まずになつこシリーズを語るのはいかがものかと思い、封印していたのだ。


では、森奈津子の著作を読んでみた今の私はどう書評するだろうか。

今読み直してみると、西澤が森奈津子の思考と文体を忠実にトレースしているのが分かる。
これは見事。読んだ当時はいい歳したおじさん(失礼)の西澤がどんな顔してこんな文章書いてるんだと思っていたが、ここには敬意と愛が込められていることが分かる。

バイセクシャルの描写とか、なつこの妄想癖とかがいかにも森がしそうで、自然だ。なるほど、知らなければただの妄想変態ミステリだが、森奈津子を知れば純然たるパロディというか、パスティーシュだということが分かる。

そう考えれば、まあワーストという評価は撤回できるかもしれない。ミステリとしては目も当てられないオチだが、森奈津子パロディとしては正しく“らしい”小説だ。

それにしても、[森奈津子ファン]かつ[西澤保彦ファン]ってあまりにも対象とする読者が狭いのではないだろうか。
SFは数年前だったら毛嫌いしていたジャンルだったが、友人にSF好きな人物が出来たおかげで最近興味が出てきた。

そこで、というか実は、少し前から段階的にSFに挑戦する計画を立ててきた。

それが西澤保彦→森奈津子高畑京一郎→ハインラインという流れなのだが、これはSF好きの人に言ったら怒られそうだな……。

この取り合わせは好きなミステリ分野で、中でも気に入っている西澤保彦から出発して、同氏の森奈津子シリーズからギャグエロSFの森奈津子(本物)へ、ライトノベルでかつ高評価を聞いていた高畑京一郎を経由して、ミステリファンの自分でも知っているSFの大家ハインラインの傑作へという自分なりに考えての流れだったりする。

前置きが長くなったが、書評に移ろう。

夏への扉夏への扉
ロバート・A・ハインライン 福島 正実

早川書房 1979-05
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どっかの普通の人間には興味のない女子生徒が憂鬱するくらいの世の中なのだし、ペンギンが憂鬱したっていいじゃないか(そういう話ではありません)。

何年か前話題になった本で、タイトルが印象的だったので気になっていたこの本。図書館でふと思い出したので借りてみた。

ペンギンの憂鬱ペンギンの憂鬱
アンドレイ・クルコフ 沼野 恭子

新潮社 2004-09-29
売り上げランキング : 84648

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時は90年代、場所はウクライナの首都キエフ。売れない小説家ヴィクトルはペンギンのミーシャと細々と暮らしていた。

なぜペンギンと同居しているかというと、キエフの動物園は動物たちにエサを与えられなくなり、市民に引き取り手を募ったからだ。
ミーシャは憂鬱症を患っている。いつも物憂げに部屋の中を歩き回っている。

ふとしたことから新聞社に伝手ができたヴィクトルはある仕事を請け負うようになる。それは、著名人が死んだ時に掲載する追悼記事を書き溜めるというものだった。

この仕事を気に入るヴィクトルだったが、死亡記事を書いた著名人が次々と亡くなるようになり、ヴィクトルの周囲に不穏な影がちらつき始める……。




以下、感想
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七貴
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