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自称小説サイト管理人七貴の、書評とだらだらとした日常を送り続けるブログ。
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久しぶりにやる気を出して更新しようとせっせと30分書いていた文章がブラウザが落ちたせいで水泡と消えてしまった。

ショックだ。

同じネタで文章を書き直すのは悔しいし苦痛なので、何か別の本を取り上げることにしよう。

ああ、そういえば前に読んだ『なつこ、孤島に囚われ』の書評があった。
お蔵入りになっていたが、これを引っ張り出してみよう。

なつこ、孤島に囚われ。なつこ、孤島に囚われ。
西澤 保彦

祥伝社 2000-10
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西澤保彦『なつこ、孤島に囚われ』

 西澤保彦の森奈津子シリーズ第一作。

 奈津子シリーズはファンの評判が、言ってしまえば、微妙だったため読まなかったのだが、安く手に入ったのもいい機会だと思い読むことにした。

 その名のとおり、同名の女性作家、森奈津子をモデルにしたシリーズで、他の実在作家も登場人物として出演している。

 バイセクシャルで「異端の百合作家」、森奈津子は、目覚めると孤島の別荘のベッドの上にいた。
 どうやら、見知らぬ女性に拉致されたようだが、島には奈津子の他、誰もいない。
 目の前には青い夏の海、冷蔵庫には毛蟹とビール、書棚には奈津子の趣味に合う蔵書があり、彼女は自分の状況もよく分からないまま別荘での生活を楽しんでしまう。
 自分のいる島を〈百合島〉、向かいに見える島を〈アニキ島〉と名づけた奈津子だったが、1週間後、〈アニキ島〉で死体が発見されてしまい……。


 140ページ強の中篇なので、すぐに読めたのだが、なんというか、疲れる作品だった。
 奈津子の一人称で物語は進むが、独特の思考と性格、ジュブナイル小説を意識した文体がきつく感じられたし、その上、官能小説のような妄想と展開が入り混じって、どうにもイロモノに仕上がっている。
 私はヘテロ至上主義者でも、同性愛者差別の気もないが、レズビアン描写が正直言ってどぎつく感じられた。

 「孤島の謎」についても、消化不良の感がある。推理も強引だが、真相はさらに強引……というか、ごり押しとか無理やりとかいうレベルではなく、……その、ひどい。

 なんだろう、森奈津子、というキャラクターを楽しむ小説だとは思う。

 私が作家、森奈津子の著作を読んでいないのが楽しめない一因なのかもしれないが、西澤の作品の中でも個人的にワースト。

 あまり、この表現は使わないように心がけているのだけど、あえて使う。「読み手を選ぶ作品です。」



……余程不満だったのだろうなあ私。

ちなみに、これを書いたのが11月中旬のころ。
書いては見たものの、森奈津子の作品を読まずになつこシリーズを語るのはいかがものかと思い、封印していたのだ。


では、森奈津子の著作を読んでみた今の私はどう書評するだろうか。

今読み直してみると、西澤が森奈津子の思考と文体を忠実にトレースしているのが分かる。
これは見事。読んだ当時はいい歳したおじさん(失礼)の西澤がどんな顔してこんな文章書いてるんだと思っていたが、ここには敬意と愛が込められていることが分かる。

バイセクシャルの描写とか、なつこの妄想癖とかがいかにも森がしそうで、自然だ。なるほど、知らなければただの妄想変態ミステリだが、森奈津子を知れば純然たるパロディというか、パスティーシュだということが分かる。

そう考えれば、まあワーストという評価は撤回できるかもしれない。ミステリとしては目も当てられないオチだが、森奈津子パロディとしては正しく“らしい”小説だ。

それにしても、[森奈津子ファン]かつ[西澤保彦ファン]ってあまりにも対象とする読者が狭いのではないだろうか。
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