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自称小説サイト管理人七貴の、書評とだらだらとした日常を送り続けるブログ。
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SFは数年前だったら毛嫌いしていたジャンルだったが、友人にSF好きな人物が出来たおかげで最近興味が出てきた。

そこで、というか実は、少し前から段階的にSFに挑戦する計画を立ててきた。

それが西澤保彦→森奈津子高畑京一郎→ハインラインという流れなのだが、これはSF好きの人に言ったら怒られそうだな……。

この取り合わせは好きなミステリ分野で、中でも気に入っている西澤保彦から出発して、同氏の森奈津子シリーズからギャグエロSFの森奈津子(本物)へ、ライトノベルでかつ高評価を聞いていた高畑京一郎を経由して、ミステリファンの自分でも知っているSFの大家ハインラインの傑作へという自分なりに考えての流れだったりする。

前置きが長くなったが、書評に移ろう。

夏への扉夏への扉
ロバート・A・ハインライン 福島 正実

早川書房 1979-05
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相棒である猫のピートは、家にあるたくさんの扉のうちのどれかが夏へ通じていると信じて疑わなかった。冬になるとピートは、全ての扉を主人と共に確かめるまで納得しなかった。
ピートの主人である、ダン・デイヴィスもまた“夏への扉”を探すこととなっていた。
親友と婚約者に裏切られ、自分の全てを奪われたダンはその“夏への扉”を冷凍睡眠保険に見出すのだが……。


ダンは冷凍睡眠で1970年から30年後の2000年に向かうこととなる。1957年に発表された小説だけに当時の近未来が過去になってしまったことが仕方ないとはいえ、残念だが、しかしそれは全くこの作品を損なう要素ではない。

自動で掃除をする文化女中器(ハイヤードガール)や家事全般をこなすロボットなどは一般家庭の普及こそ十分ではないが、当時の空想と思えないほどに的確な描写がされていることに驚く。
SFの時間ものの基本としてタイムパラドックスの問題にも取り組んでいることも面白い。

タイムマシンは機械的には描写が少ないものの、原理は独創的で反作用の原理を時間軸に応用したのが非常に面白い発想だと思った。

また、主人公ダンが科学者としてではなく、技術者としての思考と感性を持っているというのもSFという設定で効果的だ。

しかしこの作品の魅力は結末のすがしさだと思う。
2000年に目覚めたダンは最後の相棒ピートと自分の最良の理解者である少女おも失ってしまう。
ダンに訪れたのは輝く未来ではなく、孤独という名の絶望というわけだが、そこからの展開がすばらしい。

中盤、私はもしかして、もしかするとと思いながら祈るような気持ちでわくわくしながらページをめくっていた。こんなに楽しい読書は久しぶりだった。
そしてついにダンの計画が成功した時、我がことのように幸福に満たされた。

こんなに大団円の結末もあるのかと、今まで読まず嫌いだった自分を責めたくなった。できることなら2001年をダンとピートのために、ジンジャーエールで乾杯しながら迎えたかったとつくづく思った。

本当に猫のピートが愛らしく頼もしく描写されていて癒された。いや、本当、評判どおり。猫好きに読んでもらいたい傑作だ。
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