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何年か前話題になった本で、タイトルが印象的だったので気になっていたこの本。図書館でふと思い出したので借りてみた。
ペンギンの憂鬱 アンドレイ・クルコフ 沼野 恭子 新潮社 2004-09-29 売り上げランキング : 84648 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
時は90年代、場所はウクライナの首都キエフ。売れない小説家ヴィクトルはペンギンのミーシャと細々と暮らしていた。
なぜペンギンと同居しているかというと、キエフの動物園は動物たちにエサを与えられなくなり、市民に引き取り手を募ったからだ。
ミーシャは憂鬱症を患っている。いつも物憂げに部屋の中を歩き回っている。
ふとしたことから新聞社に伝手ができたヴィクトルはある仕事を請け負うようになる。それは、著名人が死んだ時に掲載する追悼記事を書き溜めるというものだった。
この仕事を気に入るヴィクトルだったが、死亡記事を書いた著名人が次々と亡くなるようになり、ヴィクトルの周囲に不穏な影がちらつき始める……。
以下、感想
発表時のタイトルは『局外者の死』
ヨーロッパで人気を博した後に『氷上のピクニック』に変えられている。
まあ、このタイトルでは日本ではとても手にとってもらえなかっただろうと私も思う。
主題としては生者の追悼記事を書く作家を取り巻く不条理な現実のお話なのだが、ここにペンギンを入れたのがこの本のミソである。
ペンギンのミーシャは犬のようにすり寄ったり、吠えたり、尻尾を振るわけもなく、オウムほどうるさくもない。猫ほど愛らしさを振りまかないが、しかし恩知らずでもない。
悩み多いヴィクトルの傍らにいるミーシャの憂鬱がものすごくかわいらしい。
漠然と不安を抱き、苦悩する小説家と物憂げなペンギンという組み合わせが、この作品の沈鬱だが暖かく、不条理であるけど愛しく感じる、なんとも不思議な雰囲気を作り上げている。
ひっそりと暮らしてきた独身男とペンギンの元に、人が集ってくる。
気のいい警察官の男、謎の男から預かった4歳の女の子。
序盤の独身男二人と幼女とペンギンという組み合わせが奇妙でおかしくて、妙に愛らしい。
警察官の姪っ子であるベビーシッターが登場し、ますます擬似家族的な暖かさを持っていくヴィクトルのマンション。確かな幸せをヴィクトルはかみ締める。
しかし、彼の知らないところで事態は進行していた。
追悼記事の需要は日に日に増し、それに伴って妖しげな人物や事件が起こり始め、事態を理解できないままにヴィクトルの幸せを形作ってきたものは静かに崩壊を始める。
最後に至るまでヴィクトルと読者は、何が起こっていたのか完全に知ることが出来ない。
ヴィクトルの書いてきた追悼記事が何の意味を持っていたか?
誰が、何のために、そしてなぜヴィクトルは舞台を降ろされねばならなかったのか?
南極からウクライナへ連れてこられ、動物園の仲間たちと別れ、マンションで一人“不条理な”境遇を憂うペンギンと、その傍らで社会の“不条理”に翻弄される何も知らされることのない追悼記事作家……
二人の不条理への憂鬱が胸に響く。
こうした小説は私には珍しかったので面白く読めた。
ペンギンのミーシャがとにかく可愛い。
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面白い話が出来るほど特異な人生も送っておりません。
二十台の男。弱小小説サイトの管理人です。
何かの縁です。どうかよろしく。
ア
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