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自称小説サイト管理人七貴の、書評とだらだらとした日常を送り続けるブログ。
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 卒論を書くために大学の図書館に篭っている。
 年内に何とかけりをつけなければと考えてカリカリしている。

 そんな中で、休憩と称して読む本のなんとおもしろいことか。状況が切迫するほど逃避って素晴らしく感じられる。

 それが、まさしく傑作だったりしたらなおのこと。論文なんか放り出してちょっと休憩のつもりが全部読んじゃうことも言ってみれば当然だよね。うんうん。

タイム・リープ―あしたはきのうタイム・リープ―あしたはきのう
高畑 京一郎

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以下、感想
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 創作小説サイトと自称しながら、ブログを開設して以来まったく新作が出ていませんでした。

 で、新作です。

 『紫煙はかく語りき』(サイトトップからNovelコーナーへどうぞ)


ミステリ
 今回はなんと、ミステリです。ミステリっぽいものなら何本か書いたことがあるのですが、謎を意識して書いたのは初めてです。短編ですのでたいしたロジックがあるわけではありませんが、楽しんでいただければ幸いです。


舞台
 小説のページにも書かれていますが、今回は某大学のキャンパス周辺を舞台しにしてます。知っている人が見るとすぐ分かります。

 この小説はもともとサークルの身内向けに書いた一編でした。なので、身内ネタ、ローカルネタも少し入れてます。

 サークルで発表したものは、キャンパスの説明が省いてあったのですが、ネットで公開するために加筆してます。ミステリはフェアでなければいけません。

 喫茶店の店名も元は実在の名前を使ってました。やっぱり直してあります。さすがにマズイので。


 そのほか、ちょこちょこ改変した部分がありますが、サークルからここまでたどり着く人はいないと思いますので思い切って公開します。

 話に粗がないか少し心配ですが……。
 後輩のY君から借りた乙一の本。確か、単行本では「石の目」が表題作になっていたと思う。

平面いぬ。平面いぬ。
乙一

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 色の違う作品が4編入っていて中々満足。

以下、簡単に感想を加える。

「石の目」
 見たものを石にするという妖怪「石の目」をめぐるホラー。
 もちろんギリシャ神話のメデューサの設定が元になっているわけだが、それを日本を舞台に、民俗的な要素を加え和風ホラーに仕上げている。ホラーというよりはよく出来た怪談話といった語り口か。
 石の目を見ない様にしながら、共に生活するという展開がホラーの展開として巧い。しかし、オチはひねってるが、先が読めてしまったので私個人としては不満が残る。いや、あまり穿って見すぎてはいかんね。
 少し文体が気になった。なんとなく無理に硬く書いてる感じで違和感がある。もっと楽に書いても良かったのではないだろうか。

「はじめ」
 小学生の主人公と友人がうそをつくために作り上げた架空の少女、はじめ。彼女のうわさは次第に一人歩きし、徐々にその存在感をましていく。

 嘘が本当になるというアイデア自体は誰でも思いつきそうな話だ。しかし、この一編は乙一の独創的なネタの料理の仕方が光る。
 物語の終わりを最初に暗示し、この荒唐無稽な話を男の子二人と女の子一人という友情を中心としたセンチメンタルな話に味付けしている。
 はじめの存在や、地下下水道、落書き、子猫といった設定や小道具をうまく伏線として活用している点も見逃せない。非常に巧く出来た短編で、思春期のほろ苦さもあって、温かい気持ちになった。

「BLUE」
 不思議な布地で作られた石を持って動く5体のぬいぐるみ。しかし、最後にあまりの布で作られたブルーは青い肌と長さの違う手足ともじゃもじゃの黒い髪を持つ不恰好な姿をしている。
 5体はある家の女の子にプレゼントされたのだが……。

 一体だけ不恰好な姿で生まれたブルーは姿に反して素直で純粋な心を持っている。その純粋さとブルーの境遇の差が悲しく、胸に迫る。
 せつない別れが美しい余韻を残す。

「平面いぬ。」
 左腕に入れた青い犬の刺青に、主人公はポッキーと名前をつけた。しかしポッキーは動き出すようになり……。

 動き出す青い犬の刺青と主人公の生活を描いた作品。ポッキーとの奇妙な共同生活から、主人公は家族との関係を見つめなおす。
 主人公が両親や弟を、その関係ではなく、他人のように名前で読んでいるのが主人公の家族との距離や空虚な感情を感じさせる。
 ポッキーも家族も、友人の山田さんも、そして主人公もまるで現実感が無く描かれているが、それがかえって寓話的な不思議な感触を作っている。
 

 この本を通してみてみると、アイデア自体は良くあるものだったり、ストレートなものなのに、アイデアの飛躍や展開のひねり方がすばらしい。
 本作に比べると『夏と花火と私の死体』『天帝妖狐』はセンスに任せた荒削りな作品に思える。
 ありきたりな設定だが発想は非凡、このギャップが乙一の才能を知らしめているのだ。
 

 
 更新できてなくてすまない。本を読まないわ、小説書かないわでどうにもネタに困る。

 書評や日常ネタとは少し違うが、昨日行った絵画展の話しを一つ。

 私は美術で2をとった(5段階だったことが救い)ことのあるような美術の才の無い男だが、絵を見るのは嫌いではない。もちろん良し悪しはまるで分からないけれど。

「“飛べなくなった人”異才・石田徹也-青春の自画像-展&マイコレクション」に行ってきた。

 その絵画展は別に大掛かりなものではなく、市街の片隅の小さな会場で行われていたものだった。

 駅でポスターを一枚見かけただけなのだが、思わず足を止めてしばらく眺めてしまった。どうしても行きたくなって携帯で写真を撮ってわざわざ調べて足を運んだという次第だ。

 石田徹也という人は静岡県焼津市出身の人だったらしいのだが、まるで知らなかった。ちなみに、わざわざ「だった」と私が書いたのは、石田さんは私が知る前に2005年に事故で亡くなっていたからだ。

 知らない人はぜひこのページを開いて欲しい。たぶん一目見ただけでその世界に引きずり込まれると思う。

石田徹也追悼展 「漂う人」

 現実感が在るようで無い薄暗い世界に、少年のような顔の男が居る。丸刈りの頭に、太い眉。その瞳は焦点を合わせず、ただ虚空に視線を泳がせている。
 会場に入った時の異様な光景が目に焼きついている。壁に掛けられた数十枚の絵には、ずらりと全てその男が描かれていた。
 男は機械になったり、虫になったり、変形したりと異形に成り果てている。
 そして企画展の入り口には一枚の写真が掲げられている。絵の男にそっくりな顔だが、少し控えめに笑っている男の写真だ。石田さんだった。

 そこにあるのは怒りではなく、静かな悲しみのように思えた。
 この人は、生きているのが辛かったんだろうな、と感想を抱いた。
 私たちが心の底で分かっていて、見ないふりをしている社会の現実……それを石田さんは怖くて辛くて仕方が無かったはずなのに、それでも描き続けた。そんなことをぼんやりと思った。

 まあ、とにかく心に突き刺さる絵画展だった。絵心の無い私がこれだけ貫かれる絵なのだから、誰が行ったって心動かされるだろう。
それだけは保証する。

 遺作集も出版されているけれど、ぜひ、大きなキャンバスに描かれた本物に出会って欲しい。

石田徹也遺作集石田徹也遺作集
石田 徹也

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 ちなみに、駿府博物館での展示は今月28日まで。
 後輩のYくんに借りた本。曰く、「すっげーくだらなくて、すぐ読めると思いますよ」……まったく、その通り。

小生物語小生物語
乙一

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 乙一がHPに綴っていた日記を出版したもの。小説ではないが、日記やエッセイとも少し毛色が違う。
 というのも、私生活や執筆活動、友人知人、編集者、関係者たちとの付き合いが書かれている部分もあれば、好きに書き散らしたような突拍子もないホラ話も平然と混ぜこぜに入っているからだ。
 このホラ話が大げさで馬鹿馬鹿しいものばかりだが、さらりと書かれたものが妙に面白く、乙一のセンスを感じさせる。

 あとがきに書かれているが、ネットで試しに「小生」という一人称を使って書いてみたところ、実際の乙一とは微妙に異なる「小生」というキャラクターが発生してしまったという。
 自分を突き放して小生というキャラクターを創った結果、筆者と乖離し始めたということだろうか。

 余談になるが、私も普段「私」なんて一人称ではなく、「俺」か「僕」を使う人間である。ネットで「私」を使うのは出来るだけ客観的に文章を書こうという決めたからなのだが、そういうところで、共感があった。

 日記は乙一の住居の変遷に従って、愛知編、東京編、神奈川編と別れている。内容が特に変わるわけではないが、福岡出身の乙一の東京観とか、引き篭もり的な自堕落な生活であるとか、執筆の過程なんかが書かれていて興味深い。神童と呼ばれた乙一の、普通の二十代らしい一面が垣間見れた。

 ホラ話の中では中古で買ったソファーの話が秀逸。そこだけ連載小説のような風合いで、このネタで短編くらいかけそうなのにと思った。

 あと、欄外に入れられた注釈がいい。ホントどうでもいいようなことまで解説している。出版社の注釈が特におもしろい。

 注釈の中にあった、滝本竜彦、西尾維新、佐藤智哉と合コンに行ったというのはすごい。このメンバーはファウストやライトノベル好きの読者にはドリームチームだけど、いくら女性ファンでも合コンはあまりしたくないメンツなのではないだろうか。
 合コンでの滝本のだめっぷりとか、西尾維新のエキセントリックっぷりが期待を裏切らなくてグッド。

 肩肘張らず、ぱらぱらとめくるだけで、下らなさにいやされる本である。
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七貴
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自己紹介:
残念ながら、紹介するほど珍しい人間でもなく、
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