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自称小説サイト管理人七貴の、書評とだらだらとした日常を送り続けるブログ。
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 後輩のY君から借りた乙一の本。確か、単行本では「石の目」が表題作になっていたと思う。

平面いぬ。平面いぬ。
乙一

集英社 2003-06
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 色の違う作品が4編入っていて中々満足。

以下、簡単に感想を加える。

「石の目」
 見たものを石にするという妖怪「石の目」をめぐるホラー。
 もちろんギリシャ神話のメデューサの設定が元になっているわけだが、それを日本を舞台に、民俗的な要素を加え和風ホラーに仕上げている。ホラーというよりはよく出来た怪談話といった語り口か。
 石の目を見ない様にしながら、共に生活するという展開がホラーの展開として巧い。しかし、オチはひねってるが、先が読めてしまったので私個人としては不満が残る。いや、あまり穿って見すぎてはいかんね。
 少し文体が気になった。なんとなく無理に硬く書いてる感じで違和感がある。もっと楽に書いても良かったのではないだろうか。

「はじめ」
 小学生の主人公と友人がうそをつくために作り上げた架空の少女、はじめ。彼女のうわさは次第に一人歩きし、徐々にその存在感をましていく。

 嘘が本当になるというアイデア自体は誰でも思いつきそうな話だ。しかし、この一編は乙一の独創的なネタの料理の仕方が光る。
 物語の終わりを最初に暗示し、この荒唐無稽な話を男の子二人と女の子一人という友情を中心としたセンチメンタルな話に味付けしている。
 はじめの存在や、地下下水道、落書き、子猫といった設定や小道具をうまく伏線として活用している点も見逃せない。非常に巧く出来た短編で、思春期のほろ苦さもあって、温かい気持ちになった。

「BLUE」
 不思議な布地で作られた石を持って動く5体のぬいぐるみ。しかし、最後にあまりの布で作られたブルーは青い肌と長さの違う手足ともじゃもじゃの黒い髪を持つ不恰好な姿をしている。
 5体はある家の女の子にプレゼントされたのだが……。

 一体だけ不恰好な姿で生まれたブルーは姿に反して素直で純粋な心を持っている。その純粋さとブルーの境遇の差が悲しく、胸に迫る。
 せつない別れが美しい余韻を残す。

「平面いぬ。」
 左腕に入れた青い犬の刺青に、主人公はポッキーと名前をつけた。しかしポッキーは動き出すようになり……。

 動き出す青い犬の刺青と主人公の生活を描いた作品。ポッキーとの奇妙な共同生活から、主人公は家族との関係を見つめなおす。
 主人公が両親や弟を、その関係ではなく、他人のように名前で読んでいるのが主人公の家族との距離や空虚な感情を感じさせる。
 ポッキーも家族も、友人の山田さんも、そして主人公もまるで現実感が無く描かれているが、それがかえって寓話的な不思議な感触を作っている。
 

 この本を通してみてみると、アイデア自体は良くあるものだったり、ストレートなものなのに、アイデアの飛躍や展開のひねり方がすばらしい。
 本作に比べると『夏と花火と私の死体』『天帝妖狐』はセンスに任せた荒削りな作品に思える。
 ありきたりな設定だが発想は非凡、このギャップが乙一の才能を知らしめているのだ。
 

 
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