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前回、クビキリサイクルの書評を書こうと思ったところ、前置きが長くなって結局、内容には触れずじまい。
というところで、今日こそ『クビキリサイクル』の書評です。
……長いです。そして話がずれてる。
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彼女の趣味は天才と呼ばれる者たちをあつめ、サロンを開くことである。
天才的なコンピュータ技術をもつ玖渚友(くなぎさ とも)(♀)が招待され、友人としてついてきた“いーちゃん”(♂)(彼の本当の名はシリーズ通して明かされない)。彼こそが、戯言遣いこと、この物語の主人公である。
5人の天才が集まり、当然とでも言うように起こる、密室首なし殺人事件、しかも連続。
いーちゃんはこの“サイクル”を止められるのか!?
……あらすじからお分かりのように、この小説は密室殺人をテーマにすえたミステリーである。
実際、トリックは意外と正当なもので、推理に耐えうる。
しかし、犯人がずばぬけている。
ある意味で、これはミステリー読みの人には絶対分からないのだ。
分かるとしたらそれは、ライトノベル読みの人だとおもう。
ミステリー好きなら最後のオチに本を壁に投げつけたくなるかもしれない。
でも、振り上げた本を投げずに、また開いてしまう……。
これは、ミステリー的に「有り」か「無し」かで言えば、断然「無し」のオチだ。
でも、おもしろい!
西尾維新が日本のミステリー史の中で、また、ライトノベル史の中で果たした役目は大きい。
それは、西尾がライトノベル的ミステリーとミステリー的ライトノベルを書いたことである。
ライトノベル的ミステリーは実のところ西尾以前に多くの作者が書いている。
特に、新本格の隆盛期に出た、森博嗣、京極夏彦、西澤保彦などは、設定や性格、キャラクター性を重視した、若い読者に支持されるミステリーを書いている。
そして、ライトノベル的ミステリーといえば、まさに京極や森の後輩、西尾の先輩に当たる、清涼院流水が居る。
清涼院流水といえば、JDCシリーズがある。Japan Detectives Club(日本探偵倶楽部)に集う探偵たちの話であり、彼らには親がどういうつもりでつけたのか気が知れない妙な名前と、「傾奇推理」やら、「理路乱歩」やら、「悟理夢中」なんていう、推理の“必殺技”を持っている。
ハイセンスな名前と強烈な設定という“キャラ付け”はまさに清涼院の血統を受け継いだといっていい。(西尾も清涼院トリビュートとしてJDCシリーズの本を書いている)
清涼院も、ある意味でミステリーの枠を超越した作家なのだが、それでも、彼が書いているのはミステリーである。
「クビキリサイクル」も、密室殺人というお題があり、一応の論理的な解決を試みている以上、ミステリーの枠組みに収まる作品であるが、シリーズはこの後、徐々にライトノベル的ミステリーから、ミステリー的ライトノベルへと移行していく。
具体的にはシリーズ二作目の「クビシメロマンチスト」以降、ミステリー要素は薄くなっていく。
三作目「クビツリハイスクール」では、一応、密室殺人事件とその解決が話の流れとなっているが、ここにおいてはキャラクター同士のやり取りと、シリーズの世界設定といった、これまで、あくまで話のサブとして語られてきたことがメインとなり、ここでミステリー要素とライトノベル要素の主従が逆転する。
四作目の「サイコロジカル」以降では、……こう言っては何だが、キャラクター一人、二人の死はストーリー上の衝撃ではあっても、謎ではなくなってしまう。
一つのシリーズがミステリーとして始まり、キャラクターもの、ライトノベルとして完結したことが西尾維新という存在の異質さであり、ミステリーファンも、ライトノベルファンも巻き込んで突き抜けたことに言い知れぬすごさがある。
そして、我々は西尾維新の影すら踏むことができず、彼の去った軌跡を眺めるばかりなのだ。
彼がエンターテイメント小説の分野で良くも悪くも生きた伝説であることは事実だ。
「クビキリサイクル」はそんな西尾維新の第一歩。
誰にとっても、良くも悪くも衝撃であることは保障します。
追伸:まだまだ書きたいことはあったのだけど、これ以上長いのもあれなので。
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面白い話が出来るほど特異な人生も送っておりません。
二十台の男。弱小小説サイトの管理人です。
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ア
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