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自称小説サイト管理人七貴の、書評とだらだらとした日常を送り続けるブログ。
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今日は、西澤保彦のデビュー作『解体諸因』。


解体諸因解体諸因
西澤 保彦

講談社 1997-12
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「解体」の名から創造できるように、本作は死体解体というテーマについて突き詰めた短編作品集。バラバラ殺人を扱いながら、ホラーにすることなく、論理をもって見事な本格推理小説としている。

少々生々しい話になるが、遺体を解体するということはかなり手間の掛かる作業である。

包丁は骨で刃が欠け、油のついたのこぎりは切れ味を失い、血と肉と油が部屋中に、体中にこびりつく。血と汚物と臓物のにおいが部屋に立ち込め、吐き気をこらえ、不安と恐怖を押さえ込みながら、終わりの見えない作業を延々と繰り返さなければならない。


現実の殺人事件において、死体をバラバラに解体するのは、たいていの場合死体を処理して、事件の発覚を防ぐためだ。

しかし、この『解体諸因』では、全ての事件において、死体は隠されることなく発見される。
つまり、犯人たちは、苦労して解体した遺体を隠蔽しなかったのだ。

では、「なぜ犯人は遺体を解体したのか?」……作中の登場人物たちは考える。

そして、西澤は全ての真相に、犯人が死体解体をしなければならなかった明確な理由を与えているのである。

この作品は短編集であるが、全て同じ街を舞台としていて、俯瞰すると、事件同士、登場人物同士の関連が見えてくる。全てを通して見ることにより、初めて浮かぶあがる複雑な関係性も面白さの一つだ。

中でも、「第八因 解体照応――推理劇『スライド殺人事件』」と、「最終因 解体順路」は作中劇を短編として書き、その台本をまた続く短編でトリックとして使うというメタ構造にあり、最終因をよんでから第八因を読み直すことで二度楽しめる仕組みとなっている。

また、本作西澤の代表シリーズである「タック・タカチ」シリーズの第一作(シリーズ的には番外編)にあたり、シリーズとは少し性格の違うタックたちが顔見せしているのもシリーズファンとしては見逃せない。

死体解体という特殊なテーマをフルに使ったロジックの数々は、ミステリを読みなれている人にも新鮮に読めるはずです。
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