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自称小説サイト管理人七貴の、書評とだらだらとした日常を送り続けるブログ。
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今日紹介するのは、西澤保彦のタックシリーズ第1作、『彼女が死んだ夜』

彼女が死んだ夜彼女が死んだ夜
西澤 保彦

角川書店 2000-05
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厳格な家庭で育てられた箱入り娘のハコちゃんこと浜口美緒。彼女はようやく念願かなって両親にアメリカでのホームステイを許可される。しかし出発前日彼女が家に帰って見ると誰もいないはずのリビングに見知らぬ女性の死体が……!
 このままでは渡米の話がパーになると思ったハコちゃんは何も知らないタックとボアンを呼び出して「何とかしてくれないと死んでやるっ!」と喉に刃物を押し当てた。成り行きで死体処理の方棒を担ぐことになってしまったタックたち。しかし事件はとんでもない展開に……



解説
タック、タカチ、ボアン、ウサコ安槻大キャンパス4人組揃い踏みのタックシリーズ長編第1作。ハコちゃんに降りかかったトラブルを巡ってコミカルに二転三転する事件と、それに対するタックたちの推理が見もの。

キャンパスを舞台としているため、青春小説の趣もある。
ボアンが格安で住んでいる訳ありの一軒家は、タックら学生の溜まり場となっていて、毎日のようにボアン主催の飲み会が開かれる。この集まりが個性豊かな面々ばかりでなんとも居心地よさそうなのだ。
タックシリーズはこのタックやボアンたちの飲み会に自分もいるようで、推理議論にいつのまにか参加しているような雰囲気を味わえるのが一番の醍醐味。

正体の分からない死体の謎を巡る推理は、推論に推論を重ね最後には衝撃の事実が明らかになる。多少穴があるものの、ロジックもしっかりしたもので十分におもしろい。

本作は序盤に、コミカルなどたばたコメディから入り、中盤に青春小説のさわやかさや葛藤が描かれる。
しかし、終盤に明かされる真実は読者を打ちのめすような重いものであり、読後に苦い味を残すかもしれない。

その点で、タックシリーズの入門としては、シリーズ一作目の本作よりも、番外編の短編集のほうを私はお勧めする。

西澤保彦という作家は、この『彼女~』からもわかるように、すちゃらかに明るい、どたばたコメディタッチの陽の作風と、人間のもうひとつの一面、愛憎、執着、蔑み、エゴに満ちた、陰の作風を併せ持っている。

特にハコちゃんについては、おそらく最初と最後では読者の抱く印象はまるっきり違うものとなっているだろう。

タックシリーズはこの後もタック、ボアン、タカチ、ウサコらの絆と友情を描いていくのだが、同時に物語には常に陰の面も常に一体につきまとっている。それはタカチの過去であり、タックのトラウマであり、ボアンの普段は見せない一面であり、明るいウサコが抱える苦悩であるのだが、それはシリーズ後半で次第に明らかにされる。

本作で初めて人の裏面と出会ったタックたちは、この後、自分たちの陰の面に否応なく向き合わされることとなる。それについては、また別の機会に詳しく語ることにしたい。

この陰陽の両面の落差に最初は戸惑うが、これこそが、タックシリーズ、そして西澤作品の魅力といえると思う。

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