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西澤保彦の森奈津子シリーズを読んだが、さっぱり理解できなかった七貴は、とりあえず評価を保留し、書評を封印。小説の主人公のモデルである、実在の作家、森奈津子の著作を読んでみる事にした。
というわけで、図書館から借りてきた『西城秀樹のおかげです』読了。
いや、正直なめてました。脱帽。読まず嫌いでした。
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森奈津子は少女小説でデビュー。現代小説からSF、ホラーまで、児童文学も官能小説も手がける作家である。その作品はレズビアン、バイセクシャルといった性愛のコアなテーマを描いたものが多い。
『西城秀樹のおかげです』はエロとギャグをふんだんに交えた異色の短編集。いや、森奈津子は“そういう作家”なのだから、異色というのも違うか。
レズビアンやらバイセクシャルやらサド、マゾ、その他変態大行進の登場人物たちで、インパクト絶大。
SF的やファンタジー的な設定も大いに生かしながら、抱腹絶倒の作品集に仕上がっている。端的に言ってしまえば「笑えてエロい、そしてバカ」
以下、簡単に紹介とコメントを書いてみる。
表題作。人類が謎のウィルスで、たった二人を残して滅亡してしまった世界。残された二人というのが、お約束の「男と女」なわけなのだけど、まったくお約束通りにはいかないあたり、森奈津子のすごさが分かる。このタイトルの意味が分かった時、爆笑。西城秀樹も天国で喜んでるだろう(死んでない)。
「哀愁の女主人、情熱の女奴隷」
“そういうこと”のために作られたマゾアンドロイド、ハンナと、ハンナの主人になってしまった人間不信の時子のやりとりが笑える。ハンナはマゾ嗜好が行き着くところまで行ってしまい、罵倒されようが殴られようが快感で、とにかくエロでバカ。
「天国発、ゴミ箱行き」
死んでしまった男が、次の生まれ変わり先を天使にコーディネイトしてもらうという話。いくつかプランを体験させてもらうのだが……。
森奈津子の自虐ネタ。自分をそこまでネタに出来るのか森奈津子。
「悶絶!バナナワニ園」
森奈津子はタイトルの付け方もすごい。というか、バナナワニ園からどうしてこんな変態小説が出てくるんだ!(褒めてる)
「地球娘による地球外クッキング」
ゲテモノは食べてみなければ気がすまない、異常な「変態味覚」を持つ美花子。今度、彼女が食べようとしたものは……。
読んでいて気持ち悪くなった。この発想は無いわ。SFもレズビアンも食欲の前では無力というお話。
「テーブル物語」
この本の中では珍しく、耽美で正統派倒錯系エロティズム作品……と思いきや、オチはやはりこうなってしまうのか。作中に出てくるテーブルの悪趣味さが珠玉。
「エロチカ79」
1979年、まだ不良という人種がかっ歩していた時代の話。
不良の池本麻里亜を、生徒会長の山崎智子が正しい道へと指導するお話……とあらすじだけ見ると、青春小説っぽいなあ。内容は多分、みなさんが想像したものと絶対に違うだろうが。
智子のエキセントリックっぷりが最高。突き抜けてる。それに律儀につっこんでしまう麻里亜がまた笑える。
ラストがまたどうしようもないオチで笑える。
個人的に「西城秀樹のおかげです」「哀愁の女主人、情熱の女奴隷」「エロチカ79」がお気に入り。
全編エロエロの作品集で、レズビアン描写も多いのだが、変態度が突き抜けていることと、ギャグのおかげで、すがすがしい位に拒否感が無い。
森奈津子にしかかけない小説だろうと思う。
エロとギャグは世界を救うと確信した。
追記:読んだのはハードカバー版なのだが、アマゾンみたら文庫版にはもう一編追加されているようだ。立ち読みでもしておこうか。
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面白い話が出来るほど特異な人生も送っておりません。
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