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自称小説サイト管理人七貴の、書評とだらだらとした日常を送り続けるブログ。
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とりあえず復活。
まだ本調子じゃない。しかし、なんとなく気が向いた。

今だ!更新する気力があるうちにさっさと書評を書いてしまうんだっ!

極限推理コロシアム極限推理コロシアム
矢野 龍王

講談社 2004-04-06
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以下、ネタばれの無い書評。ただし激辛。

書評に入る前に一つ弁解しておきたいことがある。
私は基本的に書評は誉めて終わるようにしている。

このブログで書く書評は私の個人的意見なので、むやみに貶すことでその本を好きな人を傷つけたくないと思っているし、私自身批判だけの書評は書いても読んでもいいものと思わないからだ。

上げて下げて上げる。欠点を指摘するとしても、フォローを入れて、最後には全体として誉めて纏める。
なので、誉め切れてない書評だった場合、本当に誉めるところが無かったんだと思っていただきたい。


第30回メフィスト賞受賞作品。サークルで、互いに本を交換して書評を書くという企画をしていて、後輩から渡された本。本人は、やっぱりやめたほうが良かったかもと、最後まで迷っていた。


突然に誘拐され、謎の館に監禁された面識の無い7人の男女。
「主催者」は当惑する7人に対して「推理ゲーム」の開始を宣言する――「夏の館と冬の館で、これから起こる殺人事件の犯人を推理せよ」

主人公たち7人のいる夏の館と、別の場所に建てられた冬の館、それぞれで起こる連続殺人事件。日に日に犠牲者は増え、容疑者は絞られてくる。一同は追い詰められ、恐怖と疑心暗鬼に陥る……果たして、二つの惨劇を止めることは出来るのか――。



人為的に仕掛けられた惨劇と推理ゲームという設定の発想は奇抜だ。誰しも考え付きそうだが、だからといって書くとは限らない。
こうした作品はやった者勝ちであり、人のアイデアに対してそれは自分も考えていた、安易だという批評は的外れだ。

しかし、その発想だけでこの小説は終わってしまっている観がある。
設定を活かしきれていない。
一言で言うと、“浅い”のだ。

トリックは半分ほど読んで看破できてしまった、それ以上の飛躍は無い。
というか、設定を聞いた時点でオチにうすうす感づいてしまい、確信するまで違いますようにと祈りながら読んでたぐらい。

カバー内側の作者のコメントには「とある一つのトリックアイデアから、この作品は生まれました。」とあるが、このトリックの発想自体私はそれほど珍しいとは思わない。
同じ発想ならメフィスト賞第12回受賞の霧舎巧『ドッペルゲンガー宮』の方が活かしきれている。(ベターであるというだけで、『ドッペル~』が優れているとは言わないけど)


主催者からのヒントという伏線も、どうしようもないほど下らないオチとなっているし、フーダニットも腰砕け。
犯人は犠牲者が出尽くしてからの消去法なので、分かったといわれても、手遅れに近い。


誰が犯人なのか、誰が被害者になるか分からないという極限状態が売り物だが、人物の描写が甘すぎて、ドラマ性が薄い。
ステレオタイプのキャラクター、型に嵌った反応、安っぽい人間ドラマ、どれもこれも借り物という印象。
この推理ゲームの動機も目的も作中で明かされること無く、人死の重さは羽毛ほども無い。

続編を前提として、背景を明かさなかったにしても、あまりにも不条理だ。一種のギャグと捉えるべきだろうか

もはや、ミステリーではなく、エンタメ小説だという言い訳すら空しく響く。


デビュー作だからという弁護は効かない。
彼より年下の作家でも、デビュー作は鮮烈なものが多い。

ちなみに、このシリーズの続編に『時限絶命マンション』があるらしい。

矢野龍王氏の今後に、良くも悪くも期待せずにはいられない。
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