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自称小説サイト管理人七貴の、書評とだらだらとした日常を送り続けるブログ。
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旧日記の2006年3月27日より
岡嶋二人の『99%の誘拐』の書評です。

※作品を紹介しやすいよう、アマゾンのアフィリエイトを使用することにしました。

99%の誘拐99%の誘拐
岡嶋 二人

講談社 2004-06
売り上げランキング : 76849

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今日は、西澤保彦のデビュー作『解体諸因』。


解体諸因解体諸因
西澤 保彦

講談社 1997-12
売り上げランキング : 147604

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昨日宣言しておいて、情けない話ですが、もう更新に挫けそうです。
今日からまた短期のバイトに入りまして、少々疲れております。

さて、私の本棚蔵出し書評第一弾、『十角館の殺人』です。
最初ということならこれからだろうと思って選んだ一冊です。


十角館の殺人十角館の殺人
綾辻 行人

講談社 1991-09
売り上げランキング : 41540

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ミステリー作家、綾辻行人の1987年発表の処女作。
島田荘司の起こした新本格の流れは、この『十角館の殺人』をもって大きなムーブメントとなる。
この後、有栖川有栖、法月綸太郎ら、京都大学推理小説研究会の後輩らの登場が続き、森博嗣、京極夏彦、西澤保彦のデビューする90年代半ばに、新本格は隆盛を極めることとなるのである。

ようするに、この一冊は本格推理小説というジャンルを語る時に、絶対にはずすことのできない作品なのだ。

であるからして、当然内容も歴史的評価に値するものだ。

孤島の異形の館、十角館へ訪れた大学ミステリ研究会の7人が巻き込まれる連続殺人事件。

孤島側の7人と、本土側に残った主人公、河南(かわみなみ)孝明の二つの視点を交互に入れるという形式で描かれている。この二つの視点を交互に書いていくという形式は後にも綾辻が使っている手法であり、処女作ですでに使っているのはなかなか興味深い。


孤島での連続殺人という、形式は今ではベタとも言われてしまうが、今読んでみても、プロットの緻密さには驚かされるところがあり、色あせない。

メインのトリックも、語り継がれるほどのどんでん返しが用意されている。初めて読んだときにはしばし呆然とするしかなかった。
館シリーズの恒例である、「大仕掛け」は、十角館では抑え目の物となっている。この後、「大仕掛け」がどんどん奇想天外なものになっていくわけだが、この頃の綾辻はまだ謙虚だったということか。


まさしく、綾辻の稀代の傑作。
本格を読む人ならぜひ読んでおきたい一作。
『東京タワー』読了。

東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~
リリー・フランキー

扶桑社 2005-06-28
売り上げランキング : 238

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最近は読んでおきたいと思った小説があっというまに映画やドラマになってしまう。
なので、後々ゆっくりと読もうと思っていたのに、映画が後悔される前に、ドラマが放送される前に読んでしまおうと、結構あせることになってしまう。

去年の『姑獲鳥(うぶめ)の夏』や、今年の『ダヴィンチ・コード』映画化決定と聞いてから、映画の情報に耳をふさぎつつ、必死に読んだ覚えがある。

『東京タワー』も少し前にほかのリリー・フランキーの著作と共に姉に借りたのだが、ゆっくり読もうと積んでいたところに、今月ドラマ化との情報。ちょっと、気が進まない部分もあったのだが、時間があったので今日読んでしまった。

先ほど読み終えて、感想をいざ書こうと思ったところ、29日のドラマは放送延期とのこと。例の事件の影響で。
……こうなるとがんばって読んだのに、少し悔しい気もする。


さて、だいぶ前置きが長くなりましたが、感想を。


イラストレーターで、エッセイストで、コラムニストで小説家で、そのほかいろいろやっているリリー・フランキーと、彼のオカンとオトンを描いた自叙伝的作品……

……いや、なんかしっくり来ないな。
この作品はリリー・フランキーが見つめ、見届けた“オカン”であり、少しだけ“オトン”の話であり……確かな“絆”の話……だと思う。

東京に出て、夢破れて故郷に帰った父、オトン。
育った地に居続けることができず、東京に出た息子、ボク。
故郷を失い、東京の息子の下に身を寄せ、最後には東京タワーの元で逝った母、オカン。

“ボク”から見たボクとオカンとオトンの日々を、ユーモアを交えながらも、静かに見つめ直し、目を背けることなく、丁寧に書き綴っている。

3人が夜の病室で見た東京タワーのシーンが心に残っている。
別の人生を歩んできて、どこかずれていて重なり合うことのなかった親子3人が、手鏡に映った東京タワーを見つめている。
その一瞬だけは、3人にとっての確かな繋がりがあった。
本当に素晴らしい文章だった。

話が少しずれるが、私は本や映画で泣きたくないと思うタチです。
それは、泣ける小説特集だとか、泣ける映画特集だとかで、「泣きたいから泣く」という日本人の姿勢にちょっと違和感を感じるところがあるからでして。
いや、小説や映画それ自体を否定する気は無くてですね、ただ、「泣きたいから感動するものを求める」っていうのは違うだろうと。
感動というのは、したいからするものじゃないだろう、抑えようと思っても抑えられない感情こそ感動だろうと。
まあ、青臭くそう思っているわけなのですが。

……ですが、『東京タワー』には泣かされました。
先の展開は読めるのだから、冷静に読もう、泣くものかと意地を張っていたのだけど、でも抑えられませんでした。
最後の7,80ページくらいは、嗚咽しつつ、ページを繰り、さらに進むと、涙が止まらなくて数行読むと視界が霞んでしまい、涙を拭いて、鼻をかみ、また涙を拭いて、読み進み……と、大変な状態でした。

ここまで本読んで泣いたのは、しばらく記憶に無いくらい。

この作品の前半は、淡々と、時には他人事のように冷静に自身やオカンのことを語っている。
しかし、後半にいくにつれて、その場面に近づくにつれて、著者の書いていて抑えられなくなっていく感情が文章にあふれ出してくる。

オカンはどう感じてたんだろう、何を思ってたんだろう――そんな自問が繰り返し現れるようになり、会話文だけではなく、字の文にも感極まって方言が混じるようになる。オカンに対して想いをあふれさせながら、それでも冷静に語ろうとする“ボク”に、私も感情のブレーキが利かなくなってしまった。

誰しも、親という存在には、感謝と愛情と、疎ましさと、さまざまに入り混じった感情があると思う。

それを解きほぐすように丁寧に書き上げたからこそ、この本は読む人の心に響くのだと思う。

誰にだってオカンがいる子どもなのだから。


この作品は正直、客観的な書評ができない。ギブアップです。
少しだけ、親に素直になろうと思いました。
エラリー・クイーン『エジプト十字架の謎』読了。
ちなみに、井上勇 訳の創元推理文庫版。

エジプト十字架の謎エジプト十字架の謎
エラリー・クイーン

東京創元社 1959-09
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※ちなみに、この書評では「作者」エラリー・クイーンを“クイーン”、小説の「主人公」エラリー・クイーンを“エラリー”と分けて表記している。

首を切り取られ、「T」の形ではりつけにされた変死体。そして現場に残された「T」のサイン……。

小学校校長殺害事件の調査に乗り出したエラリーであったが、しかし、事件は離れた土地で起こった百万長者の殺人事件を皮切りに、連続殺人事件へと発展していく。
姿を見せない「復讐者」の起こす事件にエラリーもついにはさじを投げることとなるが、最後にエラリーは真実にたどり着く。



サークルで推理ゲームをするために、何回かに分けて読み合わせていた小説をついに読了。翻訳小説は読みづらい。

《ミステリーを完成させた》クイーンの国名シリーズの一冊。

なかなかよかった。
クイーンの本は恥ずかしながらはじめて読んだのだけど、きちっと書かれていて論理の筋道は立てやすかった。

ちなみにサークルで出た結論でほぼ正解だった。
推理小説を読みなれた人なら読者への挑戦まででほぼ犯人を特定できるだろう。

海外の作品特有の、軽妙な掛け合いや、エラリーと彼の恩師ヤードリーとの薀蓄交じりのジョークはなかなか楽しめた。
エラリーは好奇心に満ちて活動的で、熱中すると周りが見えなくなるような子どもっぽい性格だが、それが彼の魅力だろう。これまで読んできた小説の探偵たちは偏屈であったり、陰気であったり、変人であったりすることが多かったので、私としては好感が持てた。

有名な「読者への挑戦」は楽しい仕掛けだし、終盤の自動車と飛行機を使った犯人追跡劇も息詰まる展開でよかった。

トリックは正統派で、今読んでも風化は感じられない。
しかし、私たちが読む場合、科学捜査についてはちょっと考慮しておきたいところ。指紋認証があれば、エラリーもこんなに苦労しなかっただろうに。



ただ、犯人の動機だけはちょっと浅薄すぎる。これだけの殺人事件を起こした動機に納得ができなかったのが非常に残念。
よく言われる「人物が描けていない」推理小説の典型のようなオチだった。

しかし、この作品の価値はそんなことでは決まらないだろう。

逆に言うと、ミステリーとして完成していれば、動機など瑣末なことであるという、クイーンなりの答えというようにも思えてくる作品である。

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プロフィール
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七貴
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男性
趣味:
読書 小説執筆
自己紹介:
残念ながら、紹介するほど珍しい人間でもなく、
面白い話が出来るほど特異な人生も送っておりません。

二十台の男。弱小小説サイトの管理人です。

何かの縁です。どうかよろしく。
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 アクロイド殺人事件(アガサ・クリスティ)
 生贄を抱く夜(西澤保彦)
 異邦人 fusion(西澤保彦)
 エジプト十字架の謎(エラリー・クイーン)
 江戸川乱歩傑作選(江戸川乱歩)

 解体諸因(西澤保彦)
 彼女が死んだ夜(西澤保彦)
 99%の誘拐(岡嶋二人)
 黄金色の祈り(西澤保彦)
 クビキリサイクル(西尾維新)
 九マイルは遠すぎる(ハリィ・ケメルマン)
 極限推理コロシアム(矢野龍王)
 皇国の守護者(佐藤大輔)

 西城秀樹のおかげです(森奈津子)
 十角館の殺人(綾辻行人)
 小生物語(乙一)
 涼宮ハルヒの憂鬱(谷川流)
 全てがFになる(森博嗣)

 タイム・リープ あしたはきのう(高畑京一郎)  ダブルキャスト(高畑京一郎)
 手紙(東野圭吾)
 天帝妖狐(乙一)
 DDD(1)(奈須きのこ)
 電脳娼婦(森奈津子)
 東京タワー オカンとボクと、時々、オトン(リリー・フランキー)
 独白するユニバーサル横メルカトル(平山夢明)
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 夏の夜会(西澤保彦)

 麦酒の家の冒険(西澤保彦)
 人のセックスを笑うな(山崎ナオコーラ)
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