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自称小説サイト管理人七貴の、書評とだらだらとした日常を送り続けるブログ。
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 少女漫画というのは一種のファンタジーであり、その楽しみ方はストーリーを楽しむものとシチュエーションを楽しむものに分けられる……と、これは個人的な感慨なのですが。

 私には双子の姉がいて、少女マンガが身近にあった。小学生の時分には女の子のマンガを見ることに抵抗があったのだが、読み出すとこれが結構面白かったりして、男の友人にはとても言えなかったが、よく読んでいた。(しかし、私の友人たちで姉妹がいたやつらは絶対少女マンガ読んでるんだよな。あ、男兄弟なのに読んでるやつもいたな)


 姉はリボン派だったが、姉もまた弟と同じくオタクの素養があったためか、中高では白泉社系のマンガに傾倒していった。それでも、BL系には行かなかったことには、私は人知れず感謝している。

 そんなこんなで白泉社系の少女マンガが実は好き。

 ……引かないでくれたまえ。

 で、基本的に姉の本を見るだけなのだが、そんな私が唯一買ってる作家が筑波さくらだったりする。

ペンギン革命 1 (1)ペンギン革命 1 (1)
筑波 さくら

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筑波 さくら

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ノートパソコンの《シラハ》嬢が帰ってきた。
一時は中のファイルや設定も危ないと思ったが、マザーボードを換えてもらい(学生向けの4年保障なのでタダ)、すこぶるご機嫌になって戻ってきた。NECに感謝。

さて、書評に移るとしよう。


 16歳でジャンプ小説大賞を獲った乙一の中篇2作品を収めた作品集。
この、[16歳でジャンプ小説大賞を獲った]というのは、乙一の枕詞である。


 表題作、「天帝妖狐」は行き倒れになりかけたところを助けられた、顔を包帯で隠した青年夜木をめぐるホラー。

 正直言えば、物足りない作品である。
 夜木の過去の告白や、身体が変貌していく過程などはやはり巧さを感じるが、「乙一らしさ」が足りないように思う。
 しかし、それでもラストの夜木を助けた少女、杏子との最後のやり取りは見事な美しさがあった。

 個人的には、「天帝妖狐」よりも、もう一篇の「A MASKED BALL」が白眉の出来だった。

 A MASKED BALLはトイレの落書きをめぐるホラーを書いた一篇だが、ミステリー的な展開でもある。

 主人公の上村はタバコを隠れて吸うごく普通の高校生。
 上村はより安全な校内での喫煙場所を求め、剣道場裏の男子トイレの個室にたどり着く。

 ふと見たトイレの壁にあったのは「ラクガキスルベカラズ」という妙な落書き。

 そこに、上村たちその個室の利用者がメッセージをつけ始める。
 
 お互い顔も名前も知らないままに続く落書きメッセージのやり取り。
 しかし、校内の物を破壊するという、落書きの予告通りの事件が、発生しだし……。



 トイレの落書きでのやり取りを主軸に物語りは展開するが、ペンネームで書かれているので主人公にはほかの書き込みが誰なのかわからない。

 解説の我孫子武丸の受け売りになってしまうが、匿名性のコミュニケーションをテーマにしながら、トイレの落書きという非常にアナクロな設定でしれっと書いてしまっているのがすごい。

 中盤以降、エキセントリックな落書きと行動をするようになるなぞの人物――通称「カタカナ」をめぐり、サスペンス的な展開になるが、上村の視点からさらっと伏線やミスリードがちりばめられていて、巧みである。

 特に「カタカナ」の正体や、最後まで正体をぼかしている、ある人物のあつかいに乙一のセンスを感じる。
 これが並みの作家なら、直接的でもっとくどい描写になってしまい、余韻を台無しにしそうだ。読み返してみると巧妙な伏線の描写になっていることに感服した。

 ありふれたモチーフをひねり、何気ない描写に伏線を張り、さりげなくミスリード。絶妙に伏線を回収しつつ、展開はテンポよく。そして気持ちよく着地し、フォローも入れつつ、心地よい読了感を残して締め。

 まさに、天才・乙一の白眉の傑作。
 西澤保彦という作家に出会ったのは、私が高校3年生の後半であり、それは、まさに受験の真っ只中における逃避に間違いなかった。

 特殊な設定と突飛な発想、個性的……というよりは、少々逸脱ぎみな性格の登場人物たち、コージーミステリ的なものからSF設定を生かしたロジックミステリまでの幅広い作風、軽妙で入り込みやすい文体……。

 受験勉強で疲れた高校生が逃避するにはうってつけだったのだろう。

 だが、今にして思えば、もう一つ私を魅き付けるものが西澤保彦にはあったのだと思い当たる。

 先述した西澤作品の特徴が西澤の陽の面であるなら、私を心の奥を捕らえてやまないものは陰の面―――西澤が描く《人間の暗部》だ。

 嫉妬、性欲、物欲、名誉欲、独占欲求、憎悪、嫌悪、そして承認欲求。西澤の描く物語の“動機”の多くは人間の醜い欲望からくるものである。

 一般的にすちゃらかSFミステリの作家として認識されている西澤だが、実はえぐい作品が多いことがファンの共通認識である。

 この暗さはどこくるのか、その答えの一端が見えるのが本作品である。

黄金色の祈り 文春文庫黄金色の祈り 文春文庫
西澤 保彦

文藝春秋 2003-11-08
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以下、いつも通りネタばれなし
ここ数日更新が止まっていたのは、うたわれるものにはまっていたからである。
(人として)さまざまなものを犠牲にしながら、ようやくエンディングまでたどり着くことが出来た。あとは、アイテムのコンプリートが残っている。

さてさて、久し振りの書評である。



九マイルは遠すぎる九マイルは遠すぎる
ハリイ・ケメルマン 永井 淳 深町 眞理子

早川書房 1976-07
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「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない、まして雨の中となるとなおさらだ」


 ニコラス・ウェルトは英文学教授である。

「たとえば十語ないし、十二語からなる一つの文章を作って見たまえ」
「そうしたら、君がその文章を考えたときにはまったく思いもかけなかった一連の論理的な推論を引き出してお目にかけよう」


 ニッキィ(ニコラスの愛称)の友人であり、最近法学教授をやめ、郡検事候補となった「わたし」は、彼から、からからかい混じりにこんな挑発を受ける。

 そこで、「わたし」街中で聞いた会話の断片ををニッキィに提示してみるのだが……。



 教師の経歴を持つ著者、ハリィ・ケメルマンは、上級英作文の授業中、たまたま目にとまった新聞の一文を生徒に提示し、ここからなにが推論できるかと尋ねた。
 この試みに対し、生徒の反応は芳しくなかった、しかし、ケメルマンはこの問いに対し、自分自身が推論の深みにはまってしまう。
 そこから実に14年の推敲の果てに、完成したのが紹介した一編「九マイルは遠すぎる」である。

 ニッキィは先ほどの何気ないたった一つの文章を推理し、恐るべき犯罪の真相にたどり着いてしまう。

 本作は、表題作をはじめ、ニッキィを主人公とした短編小説集となっている。
 その全てがいわゆる安楽椅子探偵小説の形式になっていて、ニッキィは限られた情報だけで、丁寧に推論を重ね、驚くべき真相にたどり着く。

 ケメルマンが教師であったこともあるのかもしれないが、題材を殺人事件にとりながらも、どの作品も陰鬱さが無く、知的で、ある意味インテリさを感じる作風である。

 それは、短編であり、安楽椅子探偵小説という形式から来るものでも在るのだが、元法学者と英文学者の会話は非常にウィットに富んでいて、推理の楽しさ、崇高さを私達に改めて教えてくれる。

 たった一つの“文章”から真相にたどり着く表題作はもちろん傑作であるが、個人的には、たった一つの“音”から推理してしまう「おしゃべり湯沸し」がおすすめ。

 世界は謎に溢れていて、推理は至高の遊戯なのだ、と雄弁に語りかける傑作短編集。

列車の中で読んでいた本のもう一冊。
サークルの後輩に借りて積んでいた本。
やはり、列車は読書がすすむ。

名探偵はもういない名探偵はもういない
霧舎 巧

講談社 2006-04-07
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霧舎巧の本を読むのは、『ドッペルゲンガー宮』以来になる。

 
小学四年生の義弟敬二を連れ、ドライブ旅行に出かけた犯罪学者木岬(きみさき)研吾は、雪崩により、山中のペンションに足止めされる。
 そこには、秘密を抱えた宿泊客たちが集まっていた。
 そして、動き出す木岬を待っていたように起こる連続殺人事件。「名探偵」は真相へたどり着くことが出来るのか。


霧舎の本を読むのは2冊目。『ドッペル~』でも感じたのだが、霧舎はどうにも人物を描くのが下手だと思う。

犯罪学者の木岬は、その抱えている背景ゆえに、素直な人物ではないわけだが、それにしても、犯罪学者のディティールであるとか、文化人気取りの口調だとかが私には違和感があって、最初の数章で何度本を閉じたか分からない。

弟の敬二もあまりにステレオタイプの子どもで、読んでいてこちらも違和感があった。どういう風かと説明するなら、「小五郎や警察にヒントを与えようとする時のコナン演技」みたいな。
ああいう、わざと子どもぶるような態度が非常にいらいらした。
いまどきこんな子居ないって。

ストーリーのアクセントに、ロマンスを入れているのだが、これも外し気味。作者の盛り上げようとする意図は分かるが、登場人物の盛り上がりに感情移入できないのは少々寒い。

だが、これは本格ミステリ作品である。やはり、ミステリ部分に注目してみよう。

舞台設定はベーシック。雪の山荘、妖しげな宿泊客、クローズド・サークル。どれも定番である。
この作品はトリックではなく、ロジックタイプのミステリであるが、ちゃんとヒントと伏線がしっかりと張られていて、論理的に推理も組まれている。事件発生後、中盤以降の捜査と推理の過程も丁寧に追われているので、ミステリとしてはなかなか上質。

〈霧舎学園シリーズ〉など、キャラもの、イロモノミステリ作家と思われがちな霧舎だが、ミステリ作家としての地力は十分で、本作も本格の精神に忠実な作品に仕上がっている。


しかし、この『名探偵はもういない』、ただミステリじゃ終わらないのです。

この辺からネタばれにせず話をするのが難しいのだが、――が――しまうとか、探偵役が実は――だとか、そのうえ――が――だったりと、とにかく展開がすごい。
いろいろな意味ですごい。
どっちかっていうと、アレな意味ですごい。

この作品を楽しんでもらうため、伏字にせざるを得ないが、ミステリファンとして、褒めたらいいのか怒ったらいいのかちょっと私には判断しかねている。

ただ、読後感はそんなに悪くなかったということはお伝えしておく。

この、数々の隠し玉によって、読者を混乱させているので、ロジック部分は正統な本格ミステリでありながら、イロモノに仕上がっている。
むしろ、この作品の真価は、「アレ」をやってしまったことに尽きる。


ただ、この仕掛けの功罪についてはいろいろと言っておきたい事もある。

一つはミステリファンとして、アレについての見解なのだが、これはひとまず置いておく。

もう一つは、ストーリー的な問題。

この「仕掛け」は3段階になっていて、第1幕、第2幕、第3幕と対応しているのだが、これにより、物語の中心となる人物がずれてしまっている。

「仕掛け」の性質上しかたないわけだが、このスポットが当たる人物が変化することで、軸がぶれてしまい、どうにもストーリーに一貫性が感じられない。

本来縦軸になるはずの、過去の事件と登場人物たちの人間ドラマが「仕掛け」により分断されてしまっているので、どうもオチが弱くなってしまっている。

「仕掛け」の面白さは評価できるが、それにより、作品のおもしろさが損なわれてしまっているのは非常に残念。

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七貴
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男性
趣味:
読書 小説執筆
自己紹介:
残念ながら、紹介するほど珍しい人間でもなく、
面白い話が出来るほど特異な人生も送っておりません。

二十台の男。弱小小説サイトの管理人です。

何かの縁です。どうかよろしく。
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