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自称小説サイト管理人七貴の、書評とだらだらとした日常を送り続けるブログ。
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 卒論も年内に目処がつき、ほっと一安心。少し間が開いてしまったが、これが今年最後の更新になりそう。

 知り合いに勧められて母が買った文庫本を、暇だったので手にとって見たところ、引き込まれてつい、最後まで読んでしまった。

手紙手紙
東野 圭吾

文藝春秋 2006-10
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以下、ネタばれなし


弟、直貴は兄が罪を犯した日から人生を狂わされる。兄、剛志が生活苦と直貴の進学費用のため、強盗殺人を犯し、逮捕されたのだ。
住居、食事、仕事、学校、夢……直貴は全てを失った。
兄は刑務所から直貴に手紙を書き続ける。自分の罪を悔い、弟の幸せを唯一の支えとして生きている。
しかし、もう、罪は消えない。直貴の生活は戻らない。
直貴は殺人犯の弟として生き続けねばならないのだった。


一言で言ってしまえば、「重い小説」だった。救いは無い。


「殺人犯の弟」であるというレッテルは、いくら時が経っても消えることなく、直貴の人生を狂わせ続ける。


殺人という行為、贖罪、許し、いろいろと思っていることを書こうと思ったが結局やめた。

この本での剛志の行為が、直貴の決意が正しかったのか、最良の選択だったのか、他の道は無かったのか……それぞれ読んだ人が考えればいいことだと思う。

安易に納得したりして欲しくない。考え続けて欲しい。
それがこの本に込められた願いのように思う。
だから、私はこの本の書評を放棄する。
 

東野圭吾はミステリ出身の作家である。
ミステリという、「殺人」という行為があって成立する小説にとって、人の死は道具の一つでしかない。殺人事件は当然のように起こって、犯人の発覚で物語は終わる。
殺人という罪の重さについてもちろん、たいてい、登場人物たちが諭すシーンが入る。
しかし、その行為の結果引き起こすことについて、作家も読者もある程度フィクションであることを盾にして、無視している。ミステリはあくまでエンターテイメントだからだ。(だからといってミステリは非人間的な小説だと言いたい訳じゃありませんよ、私は)

だが、この物語は犯人の逮捕から始まる。
ミステリ作家にとって、タブーに近い、「殺人の結果」というテーマをここまで真正面から見つめて書いたことに非常に驚いた。

フィクションだからこそ書ける社会の現実がある。
東野は読者にそれを真っ直ぐに突きつける。




追記:年末に暇だからといって読む本ではなかった。良くも悪くも打ちのめされた。

   良いお年を。
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