[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
チョーモンインシリーズとは、中学生のような容姿に、みつあみ髪、レトロな羽織袴姿という、超能力者問題秘密対策委員会(通称チョーモンイン)の出張相談員(見習い)の神麻嗣子(かんおみ つぎこ)を中心とする超能力ミステリシリーズである。
扱われるのはテレポーテーション、サイコキネシス、念写、などなど超能力を使った犯罪たち。さまざまなツールと頭脳を使って超能力者たちの犯罪を暴き、補導するのが神麻さんの仕事なのである。
こんなSFっぽい設定ながら、内容はほのぼの。ちっちゃくてかわいらしい神麻さんと、美人の女性刑事の能解匡緒(のけ まさお)、ミステリ作家の保科匡緒(ほしな まさお・男性)の3人による、和気あいあいとしたまったり推理が楽しいシリーズになっている。
本作、『生贄を抱く夜』はこれまでのシリーズと少し違い、3人が一堂に会することはなく、サブキャラクターの神余響子(かなまり きょうこ)(作衣姿の少女・嗣子の同僚)がメインの話も含まれている。
いつもは語り部となる保科はほとんど出ずに、事件の関係者の視点から物語が語られている点で、作者があとがきで述べているように番外編といった装いになっている。
そういうこともあってか、シリーズのファンである私には少し不満の多い作品集だった。
3人のにぎやかな掛け合いが無いのが寂しいだけでなく、収録された7本が少々ミステリとしてのカタルシスが無かったのが問題。
表題作の「生贄を抱く夜」は超能力犯罪の被害者の視点から事件を描いている点でこれまでにない趣向でおもしろかったが、プロットが少々強引で穴があり、それを人物の特異な性格にこじつけている印象があって、スマートな話ではなかった。
登場人物の設定をあり得ないほどに強烈な性格にして、ミステリのプロットに組み込むという手法は、西澤得意のものだが、この手の展開は数回やるとオチがすぐ読めるようになる。
その点で、「一本気心中」「もつれて消える」と3本も同じ傾向の作品が並んでしまったのは失敗だったかと。
「動く刺青」は「生贄」と並んで今回ましな部類に入るが、主人公を念写で女の部屋を覗くおじさんにしたのが裏目に出た。おじさんが部外者過ぎて超能力を使ったトリックがどうも不発になっているような。
「殺し合い」はミステリ的な要素がほとんど無く、個人的には成立していないと思う。そのくせ後味も悪くて評価できない。
「共喰い」も同上。この展開はどうなるんだろうと思わせたのはいいが、ネタを生かしきれなかった格好。尻すぼみほどがっかりすることは無い。
「情熱と無駄の間」もミステリではないが、ミステリにならないならいっそのこと遊んでしまえという魂胆か。あきれながらも、はじけっぷりがいいので、読後感がよく、これが最後になって助かった形。
こうして振り返ってみると、やはり短編はもうマンネリでネタも出尽くした感がある。ファンとしてはそれでも3人の会話が読めればまだ満足できたと思っただけに残念だ。
最新刊の「ソフトタッチ・オペレーション」はまだ読んでないが、短編集と聞いているので少し不安。
今年は久しぶりに書き下ろしのノンシリーズの大長編が出るとの話。
楽しみにしたい。
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
面白い話が出来るほど特異な人生も送っておりません。
二十台の男。弱小小説サイトの管理人です。
何かの縁です。どうかよろしく。
ア
アクロイド殺人事件(アガサ・クリスティ)
生贄を抱く夜(西澤保彦)
異邦人 fusion(西澤保彦)
エジプト十字架の謎(エラリー・クイーン)
江戸川乱歩傑作選(江戸川乱歩)
解体諸因(西澤保彦)
彼女が死んだ夜(西澤保彦)
99%の誘拐(岡嶋二人)
黄金色の祈り(西澤保彦)
クビキリサイクル(西尾維新)
九マイルは遠すぎる(ハリィ・ケメルマン)
極限推理コロシアム(矢野龍王)
皇国の守護者(佐藤大輔)
西城秀樹のおかげです(森奈津子)
十角館の殺人(綾辻行人)
小生物語(乙一)
涼宮ハルヒの憂鬱(谷川流)
全てがFになる(森博嗣)
タイム・リープ あしたはきのう(高畑京一郎)
ダブルキャスト(高畑京一郎)
手紙(東野圭吾)
天帝妖狐(乙一)
DDD(1)(奈須きのこ)
電脳娼婦(森奈津子)
東京タワー オカンとボクと、時々、オトン(リリー・フランキー)
独白するユニバーサル横メルカトル(平山夢明)
ドグラ・マグラ(夢野久作)
夏の夜会(西澤保彦)
麦酒の家の冒険(西澤保彦)
人のセックスを笑うな(山崎ナオコーラ)
美女と野球(リリー・フランキー)
病牀六尺(正岡子規)
富嶽百景(太宰治)
平面いぬ。(乙一)
ペンギン革命(筑波さくら)
坊っちゃん(夏目漱石)
マリア様がみてる 仮面のアクトレス(今野緒雪)
マリア様がみてる 大きな扉 小さな鍵(今野緒雪)
マリア様がみてる クリスクロス(今野緒雪)
戻り川心中(連城三紀彦)
名探偵はもういない(霧舎巧)
宵闇眩燈草紙(八房龍之助)
妖奇切断譜(貫井徳郎)
ワ