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自称小説サイト管理人七貴の、書評とだらだらとした日常を送り続けるブログ。
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西澤保彦のチョーモンインシリーズ第7弾。

チョーモンインシリーズとは、中学生のような容姿に、みつあみ髪、レトロな羽織袴姿という、超能力者問題秘密対策委員会(通称チョーモンイン)の出張相談員(見習い)の神麻嗣子(かんおみ つぎこ)を中心とする超能力ミステリシリーズである。

扱われるのはテレポーテーション、サイコキネシス、念写、などなど超能力を使った犯罪たち。さまざまなツールと頭脳を使って超能力者たちの犯罪を暴き、補導するのが神麻さんの仕事なのである。

こんなSFっぽい設定ながら、内容はほのぼの。ちっちゃくてかわいらしい神麻さんと、美人の女性刑事の能解匡緒(のけ まさお)、ミステリ作家の保科匡緒(ほしな まさお・男性)の3人による、和気あいあいとしたまったり推理が楽しいシリーズになっている。

本作、『生贄を抱く夜』はこれまでのシリーズと少し違い、3人が一堂に会することはなく、サブキャラクターの神余響子(かなまり きょうこ)(作衣姿の少女・嗣子の同僚)がメインの話も含まれている。

いつもは語り部となる保科はほとんど出ずに、事件の関係者の視点から物語が語られている点で、作者があとがきで述べているように番外編といった装いになっている。


そういうこともあってか、シリーズのファンである私には少し不満の多い作品集だった。

3人のにぎやかな掛け合いが無いのが寂しいだけでなく、収録された7本が少々ミステリとしてのカタルシスが無かったのが問題。

表題作の「生贄を抱く夜」は超能力犯罪の被害者の視点から事件を描いている点でこれまでにない趣向でおもしろかったが、プロットが少々強引で穴があり、それを人物の特異な性格にこじつけている印象があって、スマートな話ではなかった。

登場人物の設定をあり得ないほどに強烈な性格にして、ミステリのプロットに組み込むという手法は、西澤得意のものだが、この手の展開は数回やるとオチがすぐ読めるようになる。

その点で、「一本気心中」「もつれて消える」と3本も同じ傾向の作品が並んでしまったのは失敗だったかと。

「動く刺青」は「生贄」と並んで今回ましな部類に入るが、主人公を念写で女の部屋を覗くおじさんにしたのが裏目に出た。おじさんが部外者過ぎて超能力を使ったトリックがどうも不発になっているような。

「殺し合い」はミステリ的な要素がほとんど無く、個人的には成立していないと思う。そのくせ後味も悪くて評価できない。

「共喰い」も同上。この展開はどうなるんだろうと思わせたのはいいが、ネタを生かしきれなかった格好。尻すぼみほどがっかりすることは無い。

「情熱と無駄の間」もミステリではないが、ミステリにならないならいっそのこと遊んでしまえという魂胆か。あきれながらも、はじけっぷりがいいので、読後感がよく、これが最後になって助かった形。


こうして振り返ってみると、やはり短編はもうマンネリでネタも出尽くした感がある。ファンとしてはそれでも3人の会話が読めればまだ満足できたと思っただけに残念だ。
最新刊の「ソフトタッチ・オペレーション」はまだ読んでないが、短編集と聞いているので少し不安。

今年は久しぶりに書き下ろしのノンシリーズの大長編が出るとの話。
楽しみにしたい。
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