谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』

アニメ好きの友人が絶対見ろというので見たアニメ、『涼宮ハルヒの憂鬱』は非常に面白かった。

今回はアニメではなく原作の小説の書評。

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とはいえ、昨年アニメが盛り上がって以降、涼宮ハルヒの憂鬱についての論評や考察は掘り尽くされた感がある。私もアニメにはまってからかなり読んだ。正直もう、いまさら書くことは何も無いような気がしている。


あらすじとしては、世界を思いのままに変える力を持った（しかし自分自身では気づいていない）涼宮ハルヒをめぐる学園ライトノベル。

涼宮ハルヒが望んだが故に、宇宙人と未来人と超能力者がハルヒの周囲に集まってきて、ハルヒが世界を退屈だと思うがために様々なトラブルが起こり、しかし、それはハルヒが知らないうちに解決されてしまう。

そこに巻き込まれてしまったごく普通の少年キョンの独特の一人称でテンポよく進んでいく。ライトノベルでもかなりアクの強い語りなので面食らうが、すぐ慣れる。



この小説のキモは学園モノの設定を逆手に取ったメタ構造にある。
よくある学園モノは平凡な主人公がある日突然特殊な力に目覚めたり、謎の敵に襲われたり、なにやら秘密を抱えたヒロインに出会ったりする。

王道に正しい学園モノはそれは偶然であり、運命であるわけである。
そしてメタ的な視点で言えば、それは小説として、作者としての都合である。

だが、そうした日常起こりえない不思議な事態は、この涼宮ハルヒの憂鬱では、全てハルヒが望んだから、ということに結論付けられてしまう。


ハルヒの周囲の人物はハルヒの憂鬱に付き合わされて右往左往し、ついには世界の再構成の危機にまで至ってしまう。
それでも、SF的パロディでメタ学園モノである本作は最後には王道としてすとんと着地しているところがなんとも。学園モノをひねって一回転したら元に戻ってしまったところにおかしみを感じる。

で、読み終わってみると、この物語の筋書き自体が涼宮ハルヒの望んだことかもしれないという考えもわくわけで、読み終わっても楽しい作品だった。

私は女性に振り回される話が大好きなタチなので涼宮ハルヒが一番お気に入り。
美少女中心に世界が回ってるって？結構じゃありませんか。