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これは大学祭の古本市で10円で買ったふっるい新潮文庫版なのでタイトルがアクロイド殺しではなく、アクロイド殺人事件になっている。
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キングスアボットというイギリスの小さな村で起こった名士アクロイド氏殺人事件。シェパード医師はアクロイド氏から生前誰かに脅迫を受けていると打ち明けられていた。アクロイド氏の甥であるラルフ・ペイトンが容疑者として浮かぶも、彼は事件当日から行方不明となっていた。
そこで田舎で隠棲していたエルキュール・ポワロが捜査に乗り出すが……。
ミステリ史に残る名作であるが、それ故に議論にもなり、噂にもなるわけで、熱心なミステリファンであればあるほど読む前にトリックを知ってしまうことになってしまう。
私もトリックについては友人や先輩からオチを仄めかされていて、見当は付いていた。本当に発表された当時に何の知識も無く読みたかったものである。
しかし、だからといってこの小説のすごさはなんの揺るぎも無かった。
実のところ最初から注意深く読んでいたつもりだったが、その見事さにすっかりやられた。
フェアかどうかという議論が出るのは当然だ。
しかし、この発想を長編として成功させたのはやはりミステリにおける功績であることに間違いない。
まあ、褒めるばかりではなく、難点もいくつか挙げられる。
トリックを最後まで気づかせないために、少々冗長……というか回りくどいまでの展開に辛さを感じた。もちろんこのクリスティの細心の慎重さによりトリックが成立しているのだが、翻訳文体の読みづらさもあってかなり苦労した。買ってから中断もあって、3ヶ月もかかってしまったのもこれが原因。
それでも読み続けられたのはシェパードの姉キャロラインの存在があったからだと思う。
村の住人で事件の記述者の姉という設定ではあるものの、彼女は事件には直接かかわっていない脇役に過ぎない。
しかしおしゃべり好きで噂好き、弟を捕まえて根掘り葉掘り事件のことを聞き出して持論による勝手な推理を始める彼女は、シェパードにとって面倒なことこの上ない存在だが、お茶目でユニークでなんとなく微笑ましくて不思議と愛らしいキャラクターとなっている。
後書きで書かれていたが、この作品が舞台劇になった折、キャロラインの設定が変更されたのを知り、クリスティは大いに嘆いたそうである。
それも納得。キャロラインはこの小説でもっとも魅力的な存在であると同時に、物語のしめに余韻と哀愁を与えている存在でもあるのだ。
実はポワロ以上に重要な役どころではないだろうか。
彼女が居ると居ないとでは物語の価値がまるで違うだろう。
古典である、が流行り廃りが激しいミステリというジャンルで古典として読み次がれるということの裏には、その作品にそれ相応の価値があると知って欲しい。
現代の作家とも堂々と張り合える傑作である。
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面白い話が出来るほど特異な人生も送っておりません。
二十台の男。弱小小説サイトの管理人です。
何かの縁です。どうかよろしく。
ア
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