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自称小説サイト管理人七貴の、書評とだらだらとした日常を送り続けるブログ。
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 卒論も年内に目処がつき、ほっと一安心。少し間が開いてしまったが、これが今年最後の更新になりそう。

 知り合いに勧められて母が買った文庫本を、暇だったので手にとって見たところ、引き込まれてつい、最後まで読んでしまった。

手紙手紙
東野 圭吾

文藝春秋 2006-10
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以下、ネタばれなし

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 卒論を書くために大学の図書館に篭っている。
 年内に何とかけりをつけなければと考えてカリカリしている。

 そんな中で、休憩と称して読む本のなんとおもしろいことか。状況が切迫するほど逃避って素晴らしく感じられる。

 それが、まさしく傑作だったりしたらなおのこと。論文なんか放り出してちょっと休憩のつもりが全部読んじゃうことも言ってみれば当然だよね。うんうん。

タイム・リープ―あしたはきのうタイム・リープ―あしたはきのう
高畑 京一郎

メディアワークス 1995-06
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以下、感想
 後輩のY君から借りた乙一の本。確か、単行本では「石の目」が表題作になっていたと思う。

平面いぬ。平面いぬ。
乙一

集英社 2003-06
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 色の違う作品が4編入っていて中々満足。

以下、簡単に感想を加える。

「石の目」
 見たものを石にするという妖怪「石の目」をめぐるホラー。
 もちろんギリシャ神話のメデューサの設定が元になっているわけだが、それを日本を舞台に、民俗的な要素を加え和風ホラーに仕上げている。ホラーというよりはよく出来た怪談話といった語り口か。
 石の目を見ない様にしながら、共に生活するという展開がホラーの展開として巧い。しかし、オチはひねってるが、先が読めてしまったので私個人としては不満が残る。いや、あまり穿って見すぎてはいかんね。
 少し文体が気になった。なんとなく無理に硬く書いてる感じで違和感がある。もっと楽に書いても良かったのではないだろうか。

「はじめ」
 小学生の主人公と友人がうそをつくために作り上げた架空の少女、はじめ。彼女のうわさは次第に一人歩きし、徐々にその存在感をましていく。

 嘘が本当になるというアイデア自体は誰でも思いつきそうな話だ。しかし、この一編は乙一の独創的なネタの料理の仕方が光る。
 物語の終わりを最初に暗示し、この荒唐無稽な話を男の子二人と女の子一人という友情を中心としたセンチメンタルな話に味付けしている。
 はじめの存在や、地下下水道、落書き、子猫といった設定や小道具をうまく伏線として活用している点も見逃せない。非常に巧く出来た短編で、思春期のほろ苦さもあって、温かい気持ちになった。

「BLUE」
 不思議な布地で作られた石を持って動く5体のぬいぐるみ。しかし、最後にあまりの布で作られたブルーは青い肌と長さの違う手足ともじゃもじゃの黒い髪を持つ不恰好な姿をしている。
 5体はある家の女の子にプレゼントされたのだが……。

 一体だけ不恰好な姿で生まれたブルーは姿に反して素直で純粋な心を持っている。その純粋さとブルーの境遇の差が悲しく、胸に迫る。
 せつない別れが美しい余韻を残す。

「平面いぬ。」
 左腕に入れた青い犬の刺青に、主人公はポッキーと名前をつけた。しかしポッキーは動き出すようになり……。

 動き出す青い犬の刺青と主人公の生活を描いた作品。ポッキーとの奇妙な共同生活から、主人公は家族との関係を見つめなおす。
 主人公が両親や弟を、その関係ではなく、他人のように名前で読んでいるのが主人公の家族との距離や空虚な感情を感じさせる。
 ポッキーも家族も、友人の山田さんも、そして主人公もまるで現実感が無く描かれているが、それがかえって寓話的な不思議な感触を作っている。
 

 この本を通してみてみると、アイデア自体は良くあるものだったり、ストレートなものなのに、アイデアの飛躍や展開のひねり方がすばらしい。
 本作に比べると『夏と花火と私の死体』『天帝妖狐』はセンスに任せた荒削りな作品に思える。
 ありきたりな設定だが発想は非凡、このギャップが乙一の才能を知らしめているのだ。
 

 
 後輩のYくんに借りた本。曰く、「すっげーくだらなくて、すぐ読めると思いますよ」……まったく、その通り。

小生物語小生物語
乙一

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 乙一がHPに綴っていた日記を出版したもの。小説ではないが、日記やエッセイとも少し毛色が違う。
 というのも、私生活や執筆活動、友人知人、編集者、関係者たちとの付き合いが書かれている部分もあれば、好きに書き散らしたような突拍子もないホラ話も平然と混ぜこぜに入っているからだ。
 このホラ話が大げさで馬鹿馬鹿しいものばかりだが、さらりと書かれたものが妙に面白く、乙一のセンスを感じさせる。

 あとがきに書かれているが、ネットで試しに「小生」という一人称を使って書いてみたところ、実際の乙一とは微妙に異なる「小生」というキャラクターが発生してしまったという。
 自分を突き放して小生というキャラクターを創った結果、筆者と乖離し始めたということだろうか。

 余談になるが、私も普段「私」なんて一人称ではなく、「俺」か「僕」を使う人間である。ネットで「私」を使うのは出来るだけ客観的に文章を書こうという決めたからなのだが、そういうところで、共感があった。

 日記は乙一の住居の変遷に従って、愛知編、東京編、神奈川編と別れている。内容が特に変わるわけではないが、福岡出身の乙一の東京観とか、引き篭もり的な自堕落な生活であるとか、執筆の過程なんかが書かれていて興味深い。神童と呼ばれた乙一の、普通の二十代らしい一面が垣間見れた。

 ホラ話の中では中古で買ったソファーの話が秀逸。そこだけ連載小説のような風合いで、このネタで短編くらいかけそうなのにと思った。

 あと、欄外に入れられた注釈がいい。ホントどうでもいいようなことまで解説している。出版社の注釈が特におもしろい。

 注釈の中にあった、滝本竜彦、西尾維新、佐藤智哉と合コンに行ったというのはすごい。このメンバーはファウストやライトノベル好きの読者にはドリームチームだけど、いくら女性ファンでも合コンはあまりしたくないメンツなのではないだろうか。
 合コンでの滝本のだめっぷりとか、西尾維新のエキセントリックっぷりが期待を裏切らなくてグッド。

 肩肘張らず、ぱらぱらとめくるだけで、下らなさにいやされる本である。
 件の森奈津子の作品を読んでみよう計画第2弾。

2006/11/29森奈津子『西城秀樹のおかげです』 エロ、ギャグ、そしてバカ。読まず嫌いでした。

 先週『西城秀樹のおかげです』と一緒に借りてきた森奈津子2冊目。
 タイトルがコレで表紙がアレだったので、ちょっとカウンターのお姉さんに出しづらかった。

電脳娼婦電脳娼婦
森 奈津子

徳間書店 2004-11-19
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 内容はSF設定の官能小説の短編集といったところ。

SF的な設定を存分に生かして、倒錯的でエロティックな官能小説に仕立てている。
 前回の『西城秀樹のおかげです』と違い、笑いは極めて少ない。その結果、森奈津子の倒錯的な性愛と情愛の形が色濃く浮かぶ作品集になっている。

 以下、簡単に各編に解説を加える。
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七貴
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残念ながら、紹介するほど珍しい人間でもなく、
面白い話が出来るほど特異な人生も送っておりません。

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 タイム・リープ あしたはきのう(高畑京一郎)  ダブルキャスト(高畑京一郎)
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 電脳娼婦(森奈津子)
 東京タワー オカンとボクと、時々、オトン(リリー・フランキー)
 独白するユニバーサル横メルカトル(平山夢明)
 ドグラ・マグラ(夢野久作)

 夏の夜会(西澤保彦)

 麦酒の家の冒険(西澤保彦)
 人のセックスを笑うな(山崎ナオコーラ)
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 平面いぬ。(乙一)
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 マリア様がみてる 大きな扉 小さな鍵(今野緒雪)
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